第74話 RDHは問うた。こんな世界に何をしにきたのかと
「あれはそういうクエストで…ハンザを殺すことで継承がなるというから仕方なく殺ったんだ…」
「そうして、継承はなったのか? 世界システムの奴隷風情が。お前達のいうクエストでどれほどのNPCが消滅したと思う。己の欲のために他者に害をなす豚風情が。ここで消えよ」
「なら、あんたを倒してゆっくりエミリーを助ける方法を探す。お前が消えろ」
RDHは無手、渚は抜刀した状態でしかもRDHの喉元に剣を突きつけている状態だ。渚が一突きすれば終わる間合いだが…
「翠嵐旋風突」
風をまとい捻りの入った渚の剣がRDHの喉元に迫る。まるで発射台から弾かれたように飛び出した一撃は超高速。これを至近距離からかわしきることなど誰にも不可能だろう。タイミング的には必殺、しかし、突いた先にはRDHはいなかった。移動ではない、転移か!? すぐに気配探知を始める渚、しかし、その瞬間を待っていたのかRDHが元の位置よりわずか数センチずれただけの位置に現れる。
奴の能力はなんだ!? 幻覚? 意識への干渉? 気配遮断? カラクリは分らないが渚の懐にいるのは確かだ。渚も慌てて攻撃に転じようとするがRDHが意識の埒外の位置にいたため決定的にワンテンポ遅れた。
「トランクイルド・ブレット」
音も無い静かな拳が数十発、渚の身体に突き刺さる。わずか数十の拳を受けただけなのに渚のHPは一桁まで減らされ活動停止の効果まで与えた。
「今ので死ななかったということはお前もステータスに表示される以上の力を持っているということか。伊達に剣王を殺せたわけではないようだな。しかし、異界人というのはこれがやっかいだな。一瞬で活動不能の大ダメージを与えたはずなのに痛みを感じていないから戦闘意欲がまるで衰えない。魔眼使いでもないのに眼力だけでオレを殺す気か?」
動けない渚に対してRDHは一方的に語りかける。
「しかし、傷ついた動物を足蹴にするような趣味は持ち合わせていない。今日はこれでお仕舞いにしてやろう」
RDHは私の方をみてつぶやいた。
「全く何もかもがままならんもんだな、この世界は…お前達、異界人はなにが楽しくてこのセカンドワールドオンラインにやってきているのだ」
そう、言い残すとRDHはエミリーを連れてどこかへ転移してしまった。
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