第739話 春日井真澄VS百の魔眼使い②
考えてみれば、あのA組での戦闘も鬼怒川を舐めていたせいで酷い目にあった。
達人者級を相手に油断などできる実力など私は持ってはいないのだ。
どれだけ、優勢な状況にあっても達人者級なら奥の手や切り札を使って一瞬で盤面をひっくり返してくる。
油断や侮りは死に繋がる行為だ。
注意しなくては。
そういうことなら、回避できる戦闘は回避した方がいいな。
鬼怒川との戦闘に益などない。
鬼怒川の直接的な戦闘能力は未知数だが、A組のメンバーは皆、鬼怒川の指示に従っていた。
実力重視のA組の中で、リーダーシップを発揮できるなら弱いわけがない。
探知や指揮以外にも絶対に何かを持っているはずだ。
私の勝利条件は鬼怒川との戦闘に勝利することではなく、都洲河を我孫子の元に連れて行くことだ。
前回の戦闘でも鬼怒川の身体能力はそれほどでもなかった。
状況によって各種【魔眼】を使い、必要な身体能力を増強させていた。
【魔眼】の使い方が独特なだけで、素の身体能力は後衛よりの前衛というところだ。
私が逃げに徹すれば、追いつけないはずだ。
追いかけることに特化した【魔眼】なんて流石に持っていないだろう。
このまま、鬼怒川のことは無視して都洲河を回収する。
そう決断し、質々浜に行なったように大きく迂回することで鬼怒川を避け、都洲河の元に向う。
都洲河は鬼怒川の【魔王調伏】に抗うため、一切の活動を停止していた。
身体活動を停止して、全てのリソースを精神防御に費やしているのだろう。
声をかけたが返事もない。
今は時が惜しい。
一刻も早く、鬼怒川の視界から消えたい。
都洲河を肩に担ぐとそのまま、帝国に向かって猛然と突き進む。
やはり、身体能力が違いすぎたのだろう。
鬼怒川は追ってこない。
追ってこれないと言ったほうが正しいのだろうが。
念のため、このまま山を駆け上り、一気に帝国領まで入る。
山の麓までたどり着けば、眼下に帝国の野営地が見える。
あの中に我孫子はいるのだろうか。
昨日は野営地の中にいない様子だったので、もう少し後方に陣地を築いているのかもしれない。
だとすれば、眼下の野営地を突っ切って進まないといけないのか。
いくら一般兵ばかりだといっても嫌だな…
「嫌なら僕と遊ぼうよ、春日井さん」
突然、背後より声がかかる。
振り返って確認すれば、鬼怒川がそこにいた。
私が驚きを隠せず、辺りを確認すれば、最初に【白気散弾】を放った荒野にいた。
マムルークから僅かに離れた外周部だ。
まさか一連のやり取り全てが幻術だったとでもいうのか。
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