第738話 春日井真澄VS百の魔眼使い①
圧倒的な脚力で一気に質々浜を引き離す。
途中、【気弾】が頭の上を飛んでいったが狙いは完全に逸れていた。
次弾の攻撃もない。
サンケイが上手くやってくれてのだろう。
知らぬ間に鬼怒川との距離は随分と開いていた。
まんまと質々浜に誘導されたというわけだ。
だが、【聖皇理力】と【黄金気】の二重かけを使えばどれだけの距離であろうとあっという間に到着できる。
いた、鬼怒川と都洲河だ。
鬼怒川は術式を完成させようと油汗を流して制御に集中しているし、都洲河はそれに抗おうと必死だ。
下手に鬼怒川に攻撃を加えるよりもこのまま爆走を緩めず、都洲河をかっさらったほうがいいかもしれない。
「【白気散弾】」
【白気】で構成された気弾の雨が降り注ぐ。
最近、使っていなかったが威力が上がっている!?
フェビアンの【拡散白気弾】並みの威力になっている。
狙いを絞らず適当に放ったわけだが凄まじい砂煙、いや砂嵐が巻き起こった。
元より攻撃目的ではなく、煙幕代わりに使うつもりだったがこれはやり過ぎたかもしれない。
だが、乱戦はこちらの狙い通り。
とっとと都洲河を回収し、ココから離脱する。
そう思った矢先、視界ゼロの砂嵐の中から痛烈な蹴りが飛んでくる。
「探知特化の僕に対して、煙幕なんて子供のお遊びだよ、春日井さん。このぐらいじゃあ、泥がはねた程度の障害にもならない。僕の目を封じるなら地球上の灯りを全て消すぐらいのことでもしないと無意味だよ」
言ってくれる。
蹴りを入れてきたのはもちろん鬼怒川だ。
「来るのが視えていたから警戒してたんだよ。全く質々浜も使えない。ここまでお膳立てしてやったんだから、もう少し時間を稼せいでもらわないと。何を敵とくっちゃべってるのやら」
私と喋りながらも都洲河への術式を解こうとはしていない。
このまま都洲河への術式を維持したまま戦うつもりなのだろうか。
それに私と質々浜のやり取りを全て観察していたような素振りだ。
今も質々浜の様子を確認している節がある。
都洲河と戦いながら、私達の観察も同時に行なっていたとでもいうのだろうか。
そればかりではない、煙幕の中でも平気で動けたのも問題だ。
視界が確保できなければ、そんな芸当は不可能だからだ。
いや、真に恐ろしいのはそこではないか。
監視カメラの映像と同じで複数の者を同時に視ることは難しい技術ではない。
難しいのは視たものの数だけ考えることだ。
であるのに、鬼怒川はその場、その場で最適な動きをしてきた。
まさか、視た事象の数だけ、思考を行なっているのだろうか。
だとしたら、私の並列運用なんかとは比べ物にならない規模の大規模並列運用だ。
ただの探知特化だと思っていたがとんだ伏兵だ。
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