第735話 春日井真澄は孤軍奮闘して頑張る⑥
残された手段は一つしかない。
【聖皇式魔王堕とし】だ。
【魔王】を倒すことを目的に開発した私の最強最大の必殺技。
ぶっちゃけ、右腕に【聖皇理力】と【黄金気】を集め、【神亀の加護】で強化した拳で殴る。
単なる高威力右ストレートだ。
だが、その威力は絶大だ。
絶対防御を誇る質々浜に正面突破を挑み、それ以上のダメージを与え倒す。
なんとも痛快な話で正直、倒せる予感はある。
だが、1日に2度も【聖皇式魔王堕とし】を使って私の右腕は耐えられるのだろうか。
いくら【黄金気】で強化しているからといって【聖皇理力】の充填に低ステータスの本体が耐えれるだろうか。
下手をすれば右腕が吹き飛んでしまうかもしれない。
こうやって考えている間も質々浜は攻撃をくわえてこない。
完全に見に徹している。
一挙手一投足が見られている自覚がある。
当然だ。今の私の攻撃力は人間の域を超えているのだから。
おそらく全神経を集中して防御に徹しないとダメージの受け流しなどできないのだ。
高位プレイヤーの壁役ともなれば、巨人族や竜との戦闘も多いだろう。
そんな奴等との戦闘で最前線に立ち、仲間を守り自分も生き残る。
たった一撃受けきれたぐらいでは意味が無い。
敵がどれだけ強かろうがどんな攻撃をしてこようが絶対に仲間を守る。
その矜持が質々浜を奮い立たせているのだろう。
舐めていたのは私の方なのかもしれない。
余力や自分の身体の心配ばかりしていた。
これから戦う鬼怒川達への警戒が常に頭の中にあった。
この質々浜も都洲河と同じで自分の全てを絞り尽くさないと勝てない相手だ。
今は全力で目の前の彼女を倒す。
右腕に【黄金気】を集中させ、右腕を強化した後、【聖皇理力】を集める。
助走をつけながら【黄金気】と【聖皇理力】を凝縮させていき、触れた瞬間に爆発させる。
後、数秒で臨界というところで突如、間延びしたような声がかかり構成が霧散させられる。
「駄目だよ~長と名乗る者が目の前の敵ばかり見てては~」
声の主はサンケイだった。
加勢にきてくれたのだろうか。
だが、懐に紙袋を抱え、とても戦闘をするような雰囲気ではない。
「そもそも、長を名乗る者がこんな前線に出てきちゃ駄目だよ~戦争に勝つ気はあるの~? 目の前で何人死んでも、平気な顔して仕事をしなくちゃ~目先の利益にだけとらわれて行動したら、後でその10倍の人数は死んじゃうよ~」
懐の芋を食べながら、サンケイは説教を続ける。
本当に助けるつもりなどあるのだろうか。
「実際、この娘との戦闘だってやる意味はないんだ~ここは僕に任せて先に行きなよ~」
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