第729話 ティルジットは摩訶不思議な敵と遭遇する⑨
超高速、超連撃の攻撃が幾重にも繰り返される。
各務原は既に防御一択だ。
十重二重に編み上げられた攻撃は俺か各務原どちらかの体力が尽きるまで続けられる。
どれほどの連撃を繰り出されていただろうか。
気が付けば各務原が倒れていた。
俺はようやく【青嵐舞踏自在陣】を止めることができた。
脚を止めると攻性防御によるカウンターが襲ってくる。
疲労困憊の身体に特大のダメージだ。
各務原が倒れてもオートで作動した。
本当に厄介な防御術だ。
意識が刈り取られそうになるがなんとか踏ん張る。
だが、身体はまるで言うことをきかない。
助っ人に来て、長年の研究成果を倒すべき本人に見せ、最大の欠点まで晒してしまった、
おまけにこの体たらくなのだから笑える。
だが、なんとか達人者級を一人倒せた。
その瞬間だった。
各務原がゆらりと立ち上がった。
あれだけのダメージを受けてまだ、動けるのか!?
手には回復アイテムが握られていた。
確実に止めを刺せなかった俺の落ち度だ。
一方、俺の身体はまるで動かない。
殺られる!?
その時だった。
猛烈な勢いで飛来したナイフが各務原の頭部に突き刺さった。
各務原は今度こそ、倒れる。
「敵の死亡も確認せず、舞い上がるのはお前の悪い癖だぞ、ティルジット」
ナイフを投擲したのはもちろんフェビアンだった。
俺が戦っている内に回復を終えたのだろう。
いつもの余裕綽々の雰囲気が戻っている。
俺が任された俺の決闘に横槍を入れられた。
今が戦時でなければこのままもう一戦おっ始めることができるほどの戦気が戻っていた。
そのぐらい俺は昂っていた。
「だが実際、助かった。腕を上げたな、ティルジット」
その一言に俺の中の嵐は凪ぐ。
なぜだか無性に自分の言動が恥ずかしくなる。
「今の大技2つはひょっとして俺対策の技だったのか? 俺でも返すのが難しい大技だったが」
黙っているとフェビアンはさらに言葉を重ねる。
「うっせーよ。いきなり蒸発したような奴がいつまでも兄弟子面すんなよ」
その一言にフェビアンが黙りこむ。
「なんで消失なんかしたんだよ。なんで、全部一人でやろうとすんだよ。なんで俺に一言の相談もなかったんだよ。俺らの仲はそんなもんだったのかよ」
フェビアンの目を見ず、俺は心に浮かんだ言葉をそのまま叩きつける。
目に涙が貯まる。
言葉にすると悔しさと悲しさが心にあふれてくる。
「今度、同なじことをする時は、絶対に俺に相談しろよ」
それだけ言うのがやっとだった。
「ああ、必ずお前に相談すると約束する。すまなかったな、ティルジット」
俺の想いを汲んでようやくフェビアンが謝罪する。
遅いんだよ、馬鹿が。
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