第726話 ティルジットは摩訶不思議な敵と遭遇する⑥
「【最強の気使い】の一人である我輩を倒せば、最強の名を名乗っても恥ずかしくない。じゃが、我輩も忙しい。まずは吾輩の最強の弟子であるフェビアンを倒せ。ちょうど歳も同じぐらいじゃろう。フェビアンを倒せば、我輩も本気で戦ってやろう」
そう黒佐賀師匠に指示されて、俺はフェビアンに挑むことにした。
以前から若くして黒佐賀最強の直弟子の名をほしいままにしており、俺も顔と名前ぐらいは知っていた。
速さ比べならともかく、強さ比べにそれほど興味のない俺は何の知識もないまま白の一門の扉を叩いた。
そうして、模擬戦闘を見学し愕然とした。
フェビアンは回復特化の【白気】しか使えない【単色の気使い】だったのだ。
それほど訓練していない俺でも3系統の【気】が使える。
本気で訓練すればさらに増やせるだろう。
これが才能の差か。
ただ回復が上手いだけの男に俺が負けるわけがない。
そう思い挑んだのだが結果は惨敗だった。
あまりにも一方的にやられるので最後は切り札まで出してしまった。
だが、切り札である俺の最大速力を使った攻撃にもフェビアンは顔色ひとつ変えずに平然と対処してきた。
初見であれば、黒佐賀師匠であってもダメージを入れれる不可避の攻撃のはずなのに。
さらに屈辱だったのは【白気使い】であるフェビアンに一度も回復を使わせることができなかったことだ。
同年代の人間にココまでコテンパンに負けたのは初めてだ。
なぜ負けたのか全く分からない。
あまりのショックに固まっていた俺は偶然、遊びに来ていたドレフュスにこう指摘された。
『頭の差だ』と。
悔しさよりも納得感の方が強かった。
ストンと腑に落ち、ようやく金縛りから解放された。
それから俺のフェビアンへの挑戦は始まった。
まずは基礎稽古の見直しからだ。
フェビアンを仮想敵に見立て、自分の好きな稽古からフェビアンに勝つための稽古へと切り替えていった。
これまでは脚の強化が中心だったが、全身隈なく強化し、身体作りからやり直した。
だが、今までほぼ我流でやってきた俺が少々考えたところで劇的な変化などあるわけがない。
実戦の中にこそ答えがあると考えた俺は毎日のようにフェビアンに挑んだ。
面倒くさがるかと思ったがフェビアンは進んで模擬戦の相手をしてくれた。
それどころか、俺が強くなるためのアドバイスまでしてくれた。
どうもフェビアンがこれまで戦闘をした中で俺が最速の敵であったらしい。
稽古相手として手頃だったのだろう。
そうして、フェビアンのアドバイスを進んで受け入れた俺はメキメキと強くなっていった。
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