第723話 ティルジットは摩訶不思議な敵と遭遇する③
あの回復力。フェビアンなみの【白気使い】だ。
薄々感じていたがフェビアンから【白気】を奪ったのか。
それならフェビアンの【白気】がゼロであることにも合点がいく。
しかし、他人の【気】を奪うことなんてできるものなのか?
いや、現に曲がりなりにも使いこなしている。
自分の常識を戦いの場に持ち込むのは命取りの行為だ。
大切なのは認め、どう対処するかだ。
原理など戦闘が終わった後に考えればいい。
「へっ、イベントが発生したんで慎重にいってたが思ったほどでもなかったな。最初の威勢はどうした、ティルジット」
俺が甚大なダメージを負ったことに気をよくしたのか、各務原が気安げに声をかけてくる。
名を名乗った覚えはないがフェビアンとの会話を聞かれたか、異界人の固有能力【スペック読み】か。
「【青気】は速度強化か。なら要らねえな。【白気】の方が使い勝手がいいぜ」
隠すつもりもないのか。自分が能力を盗んだことを賢しらに語っている。
秘匿しておいたほうが有利なのに、馬鹿なのかコイツは。
だが、おかげでだいぶ分かってきた。
コイツはフェビアンの能力を奪った。
よって、フェビアンの【白気】がゼロになった。
しかし、能力は奪えても知性や経験まで奪えるわけでない。
現に高難度の攻性防御が使える割に2流程度の動きしかできない。
要するにコイツはフェビアンの劣化版なのだ。
だとすれば、戦いようはいくらでもある。
なにしろフェビアンは俺達の目標だ。
いつか戦う時のために打倒フェビアン用の戦術はこれでもかというぐらい用意してある。
本物のフェビアンが見えているのが癪だがどうせ、一度戦えば対策を取られる。
出し惜しみはなしだ。
「俺も助かったよ。能力を盗むなんて規格外の能力を持った異界人が相手では普通は勝ち目などない。しかし、【スキル】は一流だがオツムが二流の三下なら倒すのも容易い」
まずは挑発。
できれば、各務原から攻撃してくる形が望ましい。
「何だと~」
思った以上に簡単に乗ってくる。俺は正直、あまり口撃というのは得意じゃない。
なのに簡単に釣られた。
この程度の挑発に乗せられるとはこの男、俺より短気なんじゃないのか。
「お前はフェビアンの【白気】をまるで活かせていない。本物の10分の1程度だろう。威力や精度の話をしているんじゃない。どう使い、戦闘の展開をどう持っていくかの話をしてるんだ」
フェビアンは典型的なオールラウンダーだった。こちらがどんな攻撃を仕掛けても笑って返してきた。
威力や精度、出力で上回ってもまるで関係ない。
フェビアンが真に恐ろしいのはその運用能力だった。切れすぎる頭脳というべきか。
あまりにフェビアンが強すぎたため、俺達は【白気】に苦手意識を持つほどだ。
だが、同じ技を使っても各務原にはそれがない。
だからこそ、負けるイメージがまるで沸かないのだ。
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