第721話 ティルジットは摩訶不思議な敵と遭遇する①
妙な敵だ。
【気】の流れの複雑さ、異形の装束。
間違いなく異界人だろう。
職業は【盗賊】か【盗剣士】だ。
手癖の悪さ、相手の不意をつけた時の歪んだ笑顔。
曲がった性根が透けて見える。
ただの【盗賊】というわけでもない。
最もチグハグなのは明らかに【気】を使った戦闘に慣れていないのに攻性防御なんて高難度の技を放ってくることだ。
そしてフェビアンから【白気】の反応をまるで感じない。
弱いのではなく、ゼロだ。
技術でそんなことができるわけがない。
だとすれば、原因は目の前の異界人にあるのだろう。
いくら疲弊しているといっても、あのフェビアンが倒しきれなった相手だ。
警戒するにこしたことはない。
「ティルジット。敵は精神干渉系の攻撃を仕掛けてくる、注意しろ」
見に徹したフェビアンが妙なアドバイスを送ってくる。
休んでいても底知れない圧力がある。
怒っているのだろうか?
ひどく消耗していたので挑発するような形で無理矢理、標的をかっさらった。
昔からフェビアンはどれだけ劣勢でも絶対に自分の標的は渡さない。
無理矢理奪うにはあのような方法しかないのだ。
それにしても精神干渉系? 相手はどうみても戦闘職なのだが?
精神干渉のような間接攻撃は魔法使いや支援術士が好んで使う攻撃ではないのか?
前衛職でそんな妙な技を使ってくる者がいるのか。
そんな技を覚えるぐらいなら筋力強化でもした方が効率がいい。
だが、考えてみれば先程から俺は妙に考えている。
考えすぎているといってもいい。
俺らしくない。
あのフェビアンに大口を叩いて、戦場を譲ってもらったのだ。
威勢よく啖呵をきって、返り討ちでは話にならない。
俺達の目標であるあの男に無様な戦いを見せるわけにいかない。
そのプレッシャーからいつも以上に考えているのだと思っていたのだが違うのか?
そういえば、先程、攻性防御を喰らった時も思わず引いてしまった。
何の躊躇もなくだ。
無根拠にこのまま、密着していてはまずいと思った。
気づかぬ内に奴の術中に落ちていたのかもしれない。
だが、精神干渉といっても効果は極小。
おそらく、かかりやすいが威力も弱い全体効果系。
【気】には精神防御の効果もある。
その防御を突破してきたのだ。
威力の減衰も甚だしいはず。
現れているのは無意識下での消極的行動のみ。
ならいつも以上に積極的に攻めれば怖るるに足らず。
立ち止まっていてはいつか攻撃を受ける。
高速回避を心情としている俺はダメージに弱い。
いつも通り俺から仕掛け、反撃もさせない内に仕留める。
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