第715話 ドレフュスは戦場でらしくない自分に気付く⑨
私は元々、学者肌でそれほど強くはない。
どう修行を積んでも2流止まりの戦闘力しか手にいれられなかった。
普通ならそこで諦めるのだろうが私の場合、状況がそれを許さなかった。
どこまでも高みに登っていこうとする面倒くさい友人と若いみ身空で託された一門の存在。
凡人でありながらも次のステージを目指さざるをえなかった。
そんな私が一流のフィールドでなんとか生きているのはこのひねくれた頭脳と【蓄電気の闘法】のおかげだ。
【蓄電気の闘法】を考えついたのはかなり昔だ。
それこそ、私が一門を継ぐ遙か昔だ。
ある時、他門で私より実力がかなり上の先輩達と魔獣討伐に向かった。
昔から私の一門は開放的で知られ、他所の一門と積極的に交流していたのだ。
当時、既に2流の戦闘力しかないと自覚していた私は初めてパーティーを組む先輩達に迷惑をかけてはならないと考え【気】を節約しまくって行動した。
さらに討伐に向かった魔獣はこちらの想定よりも遙かに強かったのだ。
その結果、私だけが最後まで立っており、魔獣に止めを入れ、帰還の段取りをし、先輩達にひどく感謝された。
【気使い】は【気】が尽きれば、ただの人なのだ。
それを思い知った。
そこからの私はとにかく【気】の配分・節約について考えるようになった。
それこそ重い荷物を持つ時も、怪我をした時でさえ【気】を使わず済ませた。
当然、周りからは奇異の目で見られた。
それだけならまだしも、ドレフュスは修行をサボっていると悪評判まで立った。
あれには参った。
勘違いや偏見が他人の足を引っ張るという事象を実地で体験できた。
【気】というのは使えば使うほど、その総量がアップする。
【気】を節約することは修行を放棄することと同義なのだ。
実は夜、寝る前にこっそり、全ての【気】を吐き出し総量アップの修行は行っていたのだが。
それに気の総量をアップするといっても私の場合、もう限界値が見えていた。
一応、総量アップの修行は続けていたがそれほどの成果は得られなかった。
そのことも私を苛立たせていた。
ある時、一門の先輩にそのことを相談すると『気の総量に限界はない。自分の限界を自分で決めるから限界ができてしまうのだ』と説教された。
それも一面では真実なのだと今なら理解できるが当時の私はただの精神論だと切って捨てた。
いつしか、私は他の一門から無尽蔵の気を持つ者と評価されていた。
戦闘を行うと必ず最後まで立っているからだ。
しかも戦闘終了後、他人の回復をはかったり、帰り道でまた新たな戦闘を行う始末。
自分の一門からは笑い者にされているのに他の一門からは評価されるというおかしな状況は続いた。
しかし、夜寝る前にこっそり全て【気】を吐き出すというのも効率が悪い。
なんとか保存し、次の戦闘時に使えないものかとずっと考えていた。
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