第714話 ドレフュスは戦場でらしくない自分に気付く⑧
「今ので死んでいないのとはやはりスペック以上の数値を持っているのか。だが、HPはゴッソリ減ったぞ。流石に想定外の攻撃だったのだろう?」
突き技主体の剣技で攻めておきながら、斬撃のプレッシャーで萎縮させ、【影縫い】で足止めし、さらに魔法で止めを刺す。
私が今まで戦った中でも最上位に考えてくる奴だ。
しかも最後の魔法、あれは吸血鬼が使う闇系統の魔法ではなかった。
「今のは光魔法だったのでは…なぜ吸血鬼が光魔法を使える」
私らしくなく、思わず疑問が口から出ていた。
こんな質問に敵が答えてくれるわけがないというのに。
「この程度で驚くな。俺達が立ち入ろうとする世界は身体能力だけではどうにもならん世界だ。全てに精通したオールラウンダーか究極の一点特化しか生きられない。吸血鬼の肉体ですらひ弱に感じられる。属性防御ぐらいしておくさ。俺に苦手な属性など存在しない」
絶対に嘘だ。
現に【霧化】した時、『ホーリーフィスト』の攻撃が効いていた。
全属性防御ができる者など存在しない。
それは神の領域だ。いたとしてもほんの一握りの存在。
絶対者だ。
喜汰方がそうであるわけはない。そうであるにしては弱すぎるのだ。
おそらく私と同じで魔道具を使い強制的に属性を変えたのだろう。
やはり【吸血鬼】である喜汰方の基本属性は闇系統だ。
だが、そんなことは考えれば誰でも分かる。
ミドルクラスの敵であれば、吸血鬼の身体能力、あの独特な突き技主体の剣技で相手を翻弄できる。
だがトップクラスの敵であれば、さっきの私のように聖系統でガンガン攻める。
そんな戦闘を繰り返してきたのだろう。
馬鹿でなければ、当然、弱点属性の補強は入れるだろう。
それは攻撃に関しても言える。
偏った攻撃は嵌まれば、最強の効果を得るだろうが対策されてしまえば、ひどく脆い。
一線を超えて強くなりたければ、奴の言う通り全てに精通したオールラウンダーになるか、誰にも攻略できない究極の一点特化を覚えるしかないだろう。
吸血鬼が光魔法を使えないわけではない。
使えば、反作用で自分の身体を焼くのだ。
だから普通は使わないだけだ。
それを魔道具などで補強し、使ってもダメージを負わない身体に作り変えたか、ダメージを最小限度に押さえる工夫をしているのだろう。
馬鹿弟子に見習わせたいほどの研究心だ。
対して私はどうか。
『ホーリーフィスト』は便利だが、気を込めた私の全力にはとてもついていけない欠陥兵器だ。
所詮、これも弱点補強の道具。
現象を発生させられない武闘家がミドルクラスの敵を相手にする道具だ。
目の前の相手は達人者級。トップクラスだ。
これほどの相手に出し惜しみするなど愚の骨頂。
全てを使って戦わねば勝てない相手だ。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『暖かい。それはいいが暑いのは嫌だ』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




