第713話 ドレフュスは戦場でらしくない自分に気付く⑦
運動能力は【赤気】で強化した私と同等程度。
但し、【吸血鬼】特有の再生能力や精神干渉能力があるのか。
ナチュラルに強く剣術まで使ってくる。
しかも頭がいい。
できないことを正確に理解し、必要であれば自分の拘りすら引っ込める。
手練だ。
吸血鬼の真祖を名乗っているのも不思議ではない。
私が以前、倒した吸血鬼とはえらく違う。
世代が若かったのか、戦闘経験値が少なかったのか、身体能力に頼った強引な戦い方をするやつで私の敵ではなかった。
単純に頭の質が違うだけかもしれないが目の前の異界人吸血鬼は全く別の存在だと考えた方がよさそうだ。
【フロストフィスト】を装備した状態では全力の【赤量裂破砲】を放てない。
装備を外すべきか、【霧化】に備えて維持すべきか。
と思ったらまたきた。
こちらの考えている隙を上手く狙ってきやがる。
「【旋風二段突き】」
剣士相手の戦闘は決して苦手というわけではないが、突き主体の剣技というのも馴れない。
私のテンポがひたすら崩されている。
ひたすら突いてくるなら、サーベルではなく槍を持てばいい。
その方が貫通力も速度もある。
このレベルの敵ならその程度のことは分かっている。
分かっていてあえてサーベルを選んでいるのだろう。
だとすれば、斬られるという選択肢を常に考えなければならない。
不用意に飛び込めば、真っ二つにされる。
槍使いのように懐に入れれば勝ちというわけにはいかないのだ。
斬るという選択肢を常に考えながら、目の前の突き技に対処する。
同時に2つの事象に対応するわけだから、どうしても腰がひける。
自分の間合いが作れない。
分かっていたが難敵だ。
避けることに徹しては永久に勝てない。
リスクを上げて接近する。
「【稲妻突き】」
また、突き技。
私ならここらで斬撃技も見せて牽制する。
何らかの理由で突き技しか使えないのかもしれない。
さらにリスクを上げて接近。
今、斬撃が来たら大ダメージを喰らう。
恐怖を意思の力でねじ伏せ、『ホーリーフィスト』で攻撃。
しかし、先程のようにダメージが通った感触がない。
聖属性に対する対策が打たれている!?
想定が甘かったか。
一度、距離を取って頭を冷やす。
そう思ったが動けない!?
ふと視線を落とせば、私の影が地面に縫いつけられている。
【影縛り】か!?
今まで突き技しか使ってこなかったのは、それが発動条件の一つだったからか。
気付けば喜汰方は遙か後方に下がっている。
「夜闇を破る皓の一条」
魔法!?
圧倒的な光の奔流が私を襲った。
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