第711話 ドレフュスは戦場でらしくない自分に気付く⑤
後はこの【吸血鬼】を倒せば、全てが終わる。
一門がどうなるかは今は考えない。
一呼吸し、精神統一が完了すると接近し、【赤気】をしこたま込めた拳で喜汰方の腹部を攻撃。
瞬間、喜汰方は【霧化】し私の拳は空をきる。
「レベル差いかんの問題だ。見ての通り俺は【物理攻撃完全無効化】を修得している。NPCとはいえ、女を殴るのは性に合わん。逃げるのなら追わないぞ…」
喜汰方は空中で上半身だけを具現化し、停戦勧告をしてくる。
お前に恨みはなくとも、こちらにはある。
クーリッジをあんなにボロボロにしやがって。
馬鹿弟子をボコボコにしていいのは私が許した人間だけだ。
お前もボコボコにしないと私の気が晴れない。
「退かずか…そこのやつもそうだったが【武闘家】が俺にダメージを入れることは不可能だぞ…」
文字通り上から目線で喜汰方は言ってくる。
嘘をつけ!
喜汰方の種族が【吸血鬼】なら聖属性には決定的に弱い。
【神速拳】などを使えば、【神聖】が発動し十二分にダメージは入る。
【物理攻撃完全無効化】など、ハッタリだ。
そうやって、敵の選択肢を奪っていく戦術だろう。
私には【神速拳】など使えないが、【物理攻撃完全無効化】の正体が【霧化】なら打てる手はいくらでもある。
そう思い直すと無限収納から秘蔵のコレクションを取り出す。
『ホーリーフィスト』だ。
その名の通り拳撃に聖属性を付与できる拳当てだ。
私の対死霊系モンスター用の切り札である。
これを右手に装備。
そして、左手には『フロストフィスト』。
拳を使って凍撃を放てる優れものだ。
上手く使えば対象を凍らせることもできる。
これを左手に装備。
ついでに『ウイングブーツ』に履き替え、空中戦に備える。
「力を示せ、フロストフィスト」
魔道具である『フロストフィスト』に命じれば、左手から氷の塊が次々と発射される。
しかし、飛び道具で意表を突くこともできず、喜汰方は悠々と【霧化】で回避する。
本職の魔法使いの魔法とは異なり、少々値がはる程度の魔道具の魔法は単調で威力も弱い。
だが、牽制には十分だ。
心なしか【霧化】の速度も落ちたように見える。
温度変化は霧の大敵なのだろう。
すぐさま『ウイングブーツ』の力で空を駆け、霧の中心をめがけ全力で殴る。
現象である霧を殴ったのに確かな手応えを感じる。
『ホーリーフィスト』の効果が現れている証拠だ。
霧の状態なら反撃もできまい。
このままタコ殴りにしてやろうと思ったが、早くも【霧化】を解いて実体化した。
自分の防御の要をココまで簡単に捨てれるとはそこまで馬鹿でもないようだ。
流石にクーリッジをあそこまで追い詰めただけあって手こずりそうだ。
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