第71話 ぼっち飯の渚が紹介してくれた情報屋の情報の確度は
私は例によってまた、渚の力を借りて第2階層に下りすぐさまヘンドリュック開拓村へ向かった。
しかし、エミリーはいなかった。どういうことだ?
さらに一度、ログアウトしてしまうと設定もリセットされてしまうのか二代目マシュマーや村長、目に映る人に片っ端から尋ねていったが誰もエミリーを知らないという。
長丁場になることを怖れて一旦、自宅に帰り家からログインしたのだがそれでもそんなに時間がたったわけはあるまい。ガセ情報をつかまされたのか!? 私達はとりあえず、もういちど三重野先輩に真偽を確かめるべく一度、学校に戻ろうとしたとき村の入り口に奇妙な転送陣があるのを見つけた。
「なんの転送陣だろう、これ? 前来たときはなかったよね」
「このままなんの手がかりもないまま戻るのも無意味だ。入ってみるか」
渚がそう言うと私の同意もなく勝手に転送陣に入っていく。仕方が無い、私も続くしかないか。
まばゆい光と共に転送が開始され、目を開けると目の前に巨大な城壁で囲まれた街が建っていた。
渚も絶句しながら立ちすくんでいる。なぜならこの巨大な城壁で囲まれた街以外の風景はヘンドリュック開拓村のものだからだ。特に門番がいるわけでもなかったので入ってみると1人のNPCから声をかけられた。
「ようこそ、ヘンドリュック自由街へ」
なんだ。どういうことだ??? 同じ階層に同じ村が2件あるということか? 私がいぶかしがっていると渚が唇に手を置きさっきからずっと考えていた推測を口にした。
「これがオーダメイドクエストの怖いところだ。おそらくさっきの転送陣に入れるのはエキストラクエストをクリアした4人のみ。エキストラクエストクリアしたせいでヘンドリュック開拓村が進化し、まるごと新しい第2階層があの転送陣の先にできたんだ」
なっ、階層がまるごと新築された。そんなことができるのか!? いや、できるのか。ネット世界は無限だ。基礎となるデーターもある。ならそれをそのままコピーし、後は時間の変化を加えればいいだけなのか。システム的にはそれほど難しいことではないのかもしれない。
とにかく、今はエミリーだ。私達はまるで狐に化かされたような気分のままでエミリーの探索を続ける。そして、エミリーの探索をしつつ、この村についての情報収集も開始する。
「この街は初代マシュマーがツヴィングリの街から有志と独立して作った街じゃ。数十年前まではちっぽけな開拓村じゃったが中興の祖、マシュマーの息子、二代目マシュマーが今の街にまで発展させたんじゃ。この街には面白い規則があっての多くの者が職業を2つもっておるのじゃ。あるものは兵士と音楽家。あるものは武器屋と脚本家。医者と踊り子。1つの職を為せたなら必ずまた新しいなにかを始めという規則じゃ。そのせいかやたら活気があっての、周辺の村や町からやたら人が集まってくるんじゃ。今じゃ、この大陸の中心はこの自由街じゃとこの街の住人は疑っておらんよ。ワシなんぞ、職業を3つももっておってな、歴史教師と宿屋の店主と絵描きじゃ、すごいじゃろ、わはははははははははは」
酒場で昼間から飲んでいたNPCからこの村の成り立ちを聞く。そうか、二代目マシュマー、新しいことをできる村を作ると言ってオレたちの前から飛び出していったがこんなすごい街を作ったのか。エミリーの情報のついでに集めただけだが私は嬉しくなって自然と口元に笑顔が出てしまう。
「うん!? エミリー? 中興の祖二代目マシュマーを助けた3英雄と同じ名じゃな。そういえば、そんな名前の美人のお嬢さんがワシの宿に泊まっておったの」
最後に思い出したかのようにそのNPCはそう言った。
やはり、エミリーはこの街にいるのか。私達は宿屋の位置を聞き出し、すぐに酒場を飛び出した。
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