第689話 フェビアンは最も損な役割を務める④
俺の体から【白気】が消えた!?
各務原の言葉を確認するために【白気】を展開させるがまるで発現できない。
【白気】を奪っただと!?
噂ではそんな【スキル】も実在するとは聞くが、そんなことが本当に可能だとは…
だが事実、俺は【白気】の展開ができない。
「これで俺も【白気使い】ってわけだ。いくぜ」
各務原が下卑た笑顔を浮かべながら、攻撃を再開してくる。
動きが鋭くなっている。
傍目にもスピード、威力、回復など全てのパラメーターが上がっているのが分かる。
【白気】を展開させている証拠だ。
受けた攻撃の感触からも【白気使い】であることが分かる。
一方、俺はというと全ての身体能力が落ちたせいで先程まで躱せていた各務原の攻撃が躱せない。
こんな時、春日井やクーリッジのように複数の【気】が使えれば、ここまで追いこまれることもないものを。
俺は単色の【気使い】だ。
クーリッジや春日井など、才能のある人間は複数気の同時使用を実行してくるだろうが俺のような凡人は単一気を磨くしかなかった。
流石にそのあたりの悩みはとうの昔に卒業した。
要は【白気使い】として地上最強の男になればいいだけのことだからだ。
評価など後からいくらでもついてくる。
天下を取れば、単色の【白気使い】こそが最強と後から理論も追いかけてくるだろう。
例えば、二色を求めるのは才能を分割するような行為だ。
限られた才能を単色だけに注ぐ方が効率がいいといった具合に。
実績が先で評価など後からついてくるものなのだ。
だから、複数【気】を羨ましいとも思わなかった。
【気】には無限の可能性がある。
工夫次第でどんな敵とだって戦える。
そう思っていた。
しかし、【白気】を封じられるという事態はまるで想定外だった。
【気】とは第三系統外。クロサガ王国以外では使える者も限られている。
そんなマイナーな能力を封じようというものがまずいない。
それに俺自身が長年かけて成長させてきた能力だ。
それを奪える【スキル】が存在するとは。
いいかげん【スキル】についても研究を始めなければならない。
【魔王】戦でそれを思い知らされた。
春日井と出会ったことで止まっていた時間が一気に動き出した感がある。
新しい課題。基礎技術の向上。若手の指導。
やらねばならないことが山程ある。
これまで引きこもっていたツケを一気に支払ってる気分だ。
だが、不思議と悪い気はしない。
この状況も自分が【白気】頼みの戦闘ばかりしていたせいでこうなった。
ならば、【白気】がゼロになった時のシュミレーションだと考えれば、絶好の稽古場になる。
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