第688話 フェビアンは最も損な役割を務める③
侵入者を挑発するつもりが気付けば自分の方が挑発されていた。
こういう場合はとっとと始めてしまったほうがいい。
「侵入者、お前、名前は? 無いならコソ泥とでも呼んでやるが…」
「各務原だ。テメエはフェビアンだな。人間様に逆らった報いはたっぷり受けさせてやるぜ」
そう言うと素手で殴りかかってきた。
無手なのか?
そのわりに海老名ほどの動きではない。
早くはあるが早いだけだ。
直線的な動きでフェイントやカウンターを使う様子もない。
何もなさすぎてむしろ、意表を突かれる。
ここまで何もないと逆にトラップを意識してしまう。
そのせいで攻撃か回避かの判断が一瞬遅れる。
合わせるような格好で【白気】で強化した蹴りを喰らわす。
各務原は避けることもできず、大きく吹き飛んだ。
反応がワンテンポ遅れたせいで致命傷にはならなかった。
自分でも中途半端な蹴りだと分かる。
各務原は無言で、起き上がる。
やはり、ダメージを受けていない。
防御力もなかなかのものだ。
今度は先程、俺の首を狙ったナイフを投擲。
俺もナイフで迎撃。
命中力、威力ともに申し分ない。
十分に手練れだ。だが、達人者級というほどのものでもない。
であるにもかかわらず、俺の本能は奴を達人者級だと断定している。
攻撃、防御、どちらも一流止まりの水準であるにもかかわらずだ。
海老名といい、三栗原といい、超一流を名乗るに相応しい強さを持っていた。
【魔王】にいたっては完全に別格の存在だった。
二度と戦いたいとは思えない相手だ。
だが各務原にはそれがない。
知性や偵察で力を発揮するタイプなのだろうか。
【皇帝】のように統治に秀でているというタイプには見えない。
得体のしれない不気味さが漂う。
俺の感覚を狂わせている可能性だってある。
とにかく用心して戦おう。
そのためには距離をとって戦う。
「【拡散白気弾】」
【白気】でできた霰弾が各務原を襲う。
海老名も避けられなかった技だ。
海老名に劣る各務原では当然、避けられるわけがない。
狙ったとおりに体を崩せた。
後は止めの一撃。
「【白気刧濁砲】」
が、すんでのところで狙いをわざと外す。
野郎、傷病兵を盾に取りやがった。
大技を使った技後硬直、急に狙いを外した反動、それに読んでなかった手を使われた動揺で決定的な隙ができてしまう。
気付けば各務原が肉薄していた。
腹部に各務原の拳が突き刺さる。
しかし、ダメージはそれほどのものでもない。
重い拳だが膝をつくほどのものでもない。
問題なのは各務原の様子だ。
既に勝利したかのような喜びようだ。
「はっはっはっはっ、ようやく盗ってやったぜ~お前の【白気】をよ~」
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