第687話 フェビアンは最も損な役割を務める②
よほど勘に触ったのだろう。侵入者はまだ、先程の言葉を気にかけている。
こちらも完調とは言いがたい。
もう少し、煽って様子を見るか。
「誰のことを言っているのかは分からんが、【魔王】などはそうした姑息な手段は取らないと思うが。【皇帝】や【王】にも会ったことがあるがやはり、絶対者としての風格があった。そういった格というのはこれまでの人生の結晶が日常での立ち居振る舞いに出るものだ。こんな真似をするコソ泥風情が【皇帝】になったとしても、一生、格というものは身につかんだろうな」
侵入者は異界人だという勘に従いあえて、異界人3名の絶対者の名を出す。
この侵入者、小者のくせに見栄をはりたがるタイプに思える。
こういうタイプにはこういった煽りが絶大な効果を生む。
「へっ、盗賊風情がえらそうに。俺は都洲河や我孫子さんみたいな絶対者なんか目指してねえんだよ。どうやっても一番になんてなれねえ。他人より優れた境遇、他人が羨む女、他人より優れた人生が送れればそれでいいのさ」
うん!? 俺の職業については喋っていないのに。
俺の職業を読み取ったのか!?
やはり異界人にはこちらの能力を読み取る能力があるようだ。
以前、異界人研究会に参加した時、この現象については聞かされていた。
まだクロサガ一門にいた頃だ。遙か昔のことだ。
今でも研究結果だけは機関紙で送りつけてくるイカれた研究会だ。
記事が面白いので会員費だけは払ってやっているのだが。
異界人研究会の研究によれば、全ての異界人には他者の【職業】と【スキル】を読み取る能力があるらしい。
原理は不明だ。
力だけを頼みにする流浪の民だ。子供の頃から訓練でもしているのかもしれない。
実力によって読み取る能力も大きく変わってくるとのことだが、春日井なんかはほとんど読み取れていない節があった。
こいつはどうなのだろう。
おそらく強さを数値に変換して計測しているのだろうが、数値など恣意的なものだ。
千変万化する戦場では役には立たない。
従って読み取れる情報など表層的なものだけだろうが警戒だけはしておかなくてはならない。
「ふふっ、同じことを言っている人物が俺達のトップなのだが…人物が違うとこうも変わってくるものなのだな。少なくとも、俺達のトップは戦争中であってもこういった手段は取らない。敵兵にまで情けをかけるお人好しだ」
「お前らの親玉って春日井のことだろう? あんなのプレイヤーキルマイスターの情婦じゃねえか。愛人の七光りでココまで来やがった三下じゃねえか」
「そのプレイヤーキルマイスターを俺達は知らんからな。クロサガ王がやたらビビっていたから、名前は覚えているが、俺にとっては記号にすぎない。俺の知る春日井は自分で信頼を勝ち取った英傑だがな」
春日井のことを馬鹿にされて、我知らず熱くなっている。
いつの間にここまで、俺の中で優先度が高くなったのやら。
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