第686話 フェビアンは最も損な役割を務める①
いくつもの大きな反応がマムルークに侵入してきた。
春日井は負けたのか!?
【魔王】と春日井の反応は以前、存在したままだ。
しかし、複数の大きな反応が点在している。
どうやら混戦に陥ったようだ。
最も早くに動いたのはヨウメイ。
次にクーリッジか。
クーリッジは【白癒眠】を解除して、迎撃に向かった。
あれでは完全回復にはほど遠い。
たとえ完全回復を目指さなくとも、最低限度、回復させてから迎撃に向かわねば返り討ちにあう。
侵入者の反応に焦れたのか!?
相手は達人者級だというのに判断が甘い。
勝負を急がない我慢強さも強者には重要なファクターなのだ。
今度、それを教えてやるか。
ヨウメイもクーリッジも苦戦している。
どちらも恐怖や苦痛、絶望の反応が色濃く出ている。
強敵との連戦の経験がほとんどないせいだろう。
特にヨウメイは遭遇戦だと勝てる要素がほとんどない。
早く助っ人に入ってやりたいがこちらにも敵が迫ってきた。
真っ先に医療室を狙うゲス野郎だ。
負傷者や病人をどう処置するかも戦争の重要なファクターだ。
勝てる敵にわざと止めを刺さず、負傷者を量産し、敵の脚を鈍らせるなんて策もあるぐらいだ。
敵の目的が傷病兵なのか、この医療室の破壊なのか。
いずれにせよ戦術的には正しいが性根は腐った相手のようだ。
侵入者は病室に侵入すると他の負傷者には目もくれず、真っ先に俺の元へときた。
この場で一番の実力者であるこの俺を消したいのだろう。
卑怯だが冷静なやつだ。
ナイフを取り出すと躊躇うことなく俺の首元を狙う。
すんでのところで回避。
ちくしょう、もう少しで回復に区切りがついたのに。
ナイフをもった男は金髪で制服をところどころ改造していた。
スラム街の路地裏に1人は必ずいるタイプだ。
器の小ささが透けて見える。
「へっ、怪我人風情がよく今のを回避したな」
「ふっ、侵入してきて最初に医療室を狙うような小物の刃が通るはずがない」
「うっせ~バーカ! 戦争にキレイも汚いもあるわけないだろうが」
「ふふっ、お前は戦争中でなくても同じ手段を取りそうだがな」
「あん!? NPC風情が俺に説教たれようって言うのか? 狸寝入りしてたような奴がえらそうに」
どうやら、今の言葉は勘に触ったようだ。
他の負傷者に凶刃が及ばぬよう必要以上に煽ったのがよく効いたようだ。
これでターゲットが俺に集中する。
好都合だ。
「どんな手段を使っても効率的に経験値を稼ぎ、着実にレベルアップを図る。それがこのゲームの必勝法だろうが。真っ当な方法でノロノロ稼ぐよりも裏の手段を使ってでも早く稼ぐ方が優位に立てる。多かれ少なかれココまでこれたやつは皆、普通じゃねえ。ゲームのシステム自体がそうできてる。俺はそのシステムを正確に利用したにすぎねえ」
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