第684話 クーリッジは疲れた身体に自ら鞭をうつ⑦
目を見開き、正面から喜汰方を捉える。
これから放つ大技は生涯最後の一撃になるかもしれないのだ。
乱れた心で放っては僕の名に傷がつく。
「【赤量裂波砲】」
決死の覚悟で放った一撃は先程より僅かに出力が上がっている。
喜汰方は無言でいつものように【身体変化:霧】を使い回避した。
その表情には焦りも怖れもなかった。
この程度の出力ではまるで駄目なのだ。
それが見抜かれている。
そんなこと放った本人だって重々、自覚している。
自分自身の覚悟が足りていない。
失敗すれば、死ぬ。そのイメージの構築に失敗しているのだ。
これでは死力を尽くしていない。
そう思った僕は瞳を閉じ、あえて見ることを放棄する。
視界からの情報を完全にシャットアウトし、もっと強いイメージの構築に入る。
無論、喜汰方の姿は見えていない。【気】の探知で位置を捉えているだけだ。
ナイフでも投擲されたら、避けようがない。
そのリスクがさらに出力を上げる。
だが、まだ足りない。
空間全てを吹き飛ばすほどの出力が必要なのだ。
こうなったらやるしかない。
【気】で精製した小刀を5本、空中に展開させる。
そうして、自らに刺すようプログラムする。
腹部から順番に心臓に向かって。
1投目が射出。
当然、ダメージはダイレクトに入る。
激痛のせいで一瞬、意識が飛ぶ。
それでも小刀は刺すことをやめない。
2投目も射出された。
痛い。咄嗟に作ったが現物のナイフと変わらぬ鋭さだ。
そうプログラムしたから当然だ。
残り3本だ。
それまでに喜汰方を殺さないと小刀は僕の心臓を刺し、僕は息絶えるだろう。
3投目も射出された。
【赤量裂波砲】に全ての【気】を注ぎ込んでいるせいで、防御がおなざりだ。
ナイフ程度の裂傷でも涙が出そうなほど痛い。
死の恐怖を感じ、ようやく出力が上がった。
だが、それでも足りない。
やはり、不確かな精神的技術に頼り過ぎたのだろうか。
存在もしない可能性に賭けていたのかもしれない。
だとすれば、完璧な選択ミスだ。
やり直すなら、今しかない。
簡単なプログラムだ。
残り2本が射出される前に回避するだけで助かる。
一度、回避して次の策を練るか!?
だが、その瞬間、閃きが走った。
すぐさま、宙を漂っている2本の小刀に新たなプログラムを走らせる。
今やれる最大規模の【威力強化】、【追尾機能】、【心臓へのピンポイントヒット】、【高速射出】を付与する。
これが撃たれれば、間違いなく僕が死ぬ状況を作り上げる。
間髪を入れずに4発目が突き刺さる。
先程までのものとは違って、段違いに重くて早い。
【威力強化】が施されているだけあって、胸に穴が空きそうなほどの威力だ。
気が狂いそうである。
次が本命だ。
次は心臓めがけて飛んでくる。
残り、数秒以内で成功させなければ間違いなく僕は死ぬのだ。
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