第681話 クーリッジは疲れた身体に自ら鞭をうつ④
落ち着け、これまでも無生物系とは戦ったことはある。
しかも全てに勝ち越してる。
死霊系なんか、まさに無生物だ。
あの時はどうしたんだっけ。
って、師匠が対霊装備を用意してくれたんだ!
精霊戦の時もそうか。
師匠が装備を準備し、さらに勝てそうな相手まで用意してもらって勝ったんだ。
その上、大怪我しないように監督までしてもらったんだ。
最近は対人戦が多かったからすっかり忘れていた。
それで自分が勝利したと思い込んでたとはつくづく恥ずかしいな。
いなくなって始めて、そのありがたみが分かる。
今度は邪険にせず、礼を言っておこう。
過去の戦闘の経験は参考にならない。
かくなる上は戦いながら戦術を編み出すしかない。
目下、最大の課題は攻撃が通らない事。
【物理攻撃完全無効化】だ。
攻略のヒントはある。
【吸血鬼】は霧となり、僕からの攻撃を完璧に回避する。
その際、僕が振るった拳には常に水滴がついている。
霧とは水滴の集まりだとも聞いたことがある。
つまり瞬時に大量の水滴に変化し、僕の攻撃を避けているということだ。
なら、水滴を一瞬で蒸発させるような攻撃を放てばいいのだ。
だが、ここで問題が出てるくる。
【気】というエネルギー体は熱や雷といった【自然エネルギー】への変換を苦手としているのだ。
得意なのは【威力強化】や【状態異常回復】。
つまりは人間の【状態の向上】だ。
人間由来の生命エネルギーなので人間の補助にしか効果がないのだ。
それは、ほぼ全種類の【カラーオーラ】が使える僕であっても例外ではない。
黒佐賀王であっても【気】を炎に変えることなどできないだろう。
むしろ、この僕ができないのだ。
存在しないと考えていい。
そのぐらい、【気】と【自然エネルギー】とは相性が悪い。
もしかして、フェビアンさんならそういった研究をしているかもしれないがあまりメジャーではないテーマだ。
流石にそんなことまで研究していないだろう。
素直に魔法使いを雇った方が早い。
そのような可能性の模索は【気使い】の本流ではない。
とたった今まで思っていたが、今は猛烈に猛烈に後悔している。
【気使い】の開祖は【武闘家】だったと聞く。
彼は【魔法使い】が苦手だった。
ある時、同じパーティーにいた【魔法使い】にその脳筋ぶりを馬鹿にされ、自分の優秀さを証明するために【気】の研究を始めた。
その結果、【気】の使い方は体系化され、爆発的に広がった。
今では【気使い】は総称で、【快癒士】など様々な職業まで存在する。
開祖の武闘家はその魔法使いに様々な駄目出しを受けた。
最も有名なのが武闘家は遠距離攻撃に弱いという大問題だ。
これは最終的に開祖の武闘家でも解決できなかった。
開祖の武闘家はその解答を後世の人間に託した。
長い歴史の中でその問題は克服され、今や我々は魔法使いよりも高い火力の技を使える。
それで開祖の武闘家の大問題は解決されたと今の今まで思っていた。
しかし、魔法使いの問いには遠距離攻撃へのバリエーションがないことも含まれていたんじゃないかな。
現に今の遠距離攻撃は威力を上げるためのバリエーションは豊富だが、種類についてのバリエーションがほとんどない。
それが今、仇となっている。
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