第676話 ヨウメイ奮戦す⑦
さしもの三栗原も全ての欠片を回避するというわけにはいかなった。
礫が小さかったせいでダメージが小さいのが難点だが確かにダメージが入った。
今ので気付いたことがある。
探知特化の仕様と言っていたが、あくまでも私に対して、人間に対しての探知特化だ。
無機物に対してではない。
そういえば、電流も喰らっていた。
三栗原とて万能でもなければ、無敵でもないのだ。
【魔王】と違って防御力は弱い。
あれほどデタラメな強さを持っているわけではない。
十二分にやれる。
まだ、生きる目も残っているようだ。
相討ちだけでなく、撤退、撃破の選択肢についても考えておこう。
捨て鉢的思考にだけは陥らないように注意し、同時に覚悟だけは決めておこう。
「いやな応用力ね。レベル的には前回とまるで変わっていないのに戦術の幅は広がっている。私には見えない隠しステータスの数値が高いのね、きっと。けど、今日は前回とは違うわ。慢心は捨てた。ノーダメージで勝とうなんて思っていない。これしきの傷では引いてあげないわよ、ヨウメイ」
間が大きく空いたせいだろう。
三栗原の方から話かけてきた!?
私の名を呼んでいるがこれは本当に話かけてきたのだろうか?
自分への確認!? にも思える。
前回の戦いとは違い同格の相手と認めてくれたのかもしれない。
これなら会話も通じるかもだ。
止血のためにもトークで時間を稼ぐ。
「そこまで偏執的に狙われる理由が分からないですけど…前回の戦闘も正々堂々とした勝負だったはずです。格下に負けたことがそれほどプライドを傷つけたんですか?」
様子見のつもりでおそるおそる敬語を使い尋ねる。
「そんなプライドの話じゃないのよ。勝負事に100%は存在しないし、下手を打ったのも私が悪い。勝敗については納得しているし、そこまで馬鹿でもない。要は実害の話よ」
思いがけず、すらすらと返事が帰ってくる。
しかし、その語りが尋常ではない。
その妄執を現しているかのようだ。
「あなた程度に話しても無駄かもしれないけど、私達プレイヤーは、死ぬと非常に大きなデスペナルティーを支払うのよ。任意の場所で【復活】するにも多額のお金が必要だし、なによりも経験値ペナルティが痛い。私の場合、死んだせいで経験値がごっそりもっていかれた。1年分の貯めてた経験値がパアだし、次のレベルアップまでどれだけの時間と労力がかかるかも分からない。私のようなハイランカーは年次計画を組んでレベルアップについて考えているの。それが狂ったどころか、土台から覆えされた。どこから修正したらいいか分からないレベルよ。人生計画が狂ったと言ってもいいわ。今さら、超高位レベルの敵と戦ってさらなるリスクを取るなんて御免だし、勝てるとも思わない。まったくどうしてこんなことになったのやら…」
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