第674話 ヨウメイ奮戦す⑤
三栗原は相変わらず意味不明の言葉で罵ってくる。
これは精神攻撃か何かなのだろうか。
だとしたら、ちっとも効いてないのだが。
むしろ、冷えた頭で考える時間ができてラッキーだ。
しかし、考えてみたが形勢は圧倒的に不利だ。
強敵と戦う時、装備を変えることで自分の向き不向きを調整し、相手の強み弱みに備えるというのは戦術の基本だ。
それでも、まさか私専用に装備を整えてくるとは…
ココまでしてくる敵など初めてだ。
しかも、状態異常耐性と探知強化って私の強みをほとんど消されているではないか。
本当に私のことを研究している。
しかも、それが的中しているのだ。
こちらは準備不足で向こうは準備万端。
『嵌めて殺す』を心情としている私が見事に嵌められている。
思惑通りに事が進まなければ、一旦、退却して再起を図る。
そう自分ルールで決めているのに、まんまと三栗原の挑発に乗り、窮地に陥っている。
もはや逃げることもできない。
自分の馬鹿さ加減が嫌になる。
あそこは何としてもでも逃げなくてはならなかったのだ。
とにかく、向こうの精神状態が平静でないのが唯一の救いだ。
ハイなのかローなのかは分からないが全く普通ではない。
なんとか隙を作って逃げる。
お頭の【白気】の入った『保蔵の竹筒』を手持ちのナイフにセット。
【ヨウメイ流外部供給型武器強化】を作動。
こういう事態に備えて、ナイフだけはたくさん携帯している。
今日は何本、潰れても大丈夫だ。
【ヨウメイ流外部供給型武器強化】なら三栗原の身体にダメージが入ることは実証済。
一度は三栗原の脚を断った【スキル】だ。
少しはプレッシャーを与えることができるかもしれない。
【青気】で脚力を強化し、接敵。
しかし、一合も切り結ぶこともなく手首を斬られ、ナイフを落とす。
ナイフは私の手から離れて瞬間、破砕した。
「はははっ。超高速演算型NPCといっても随分、雑ねえ! 威力が凄くても、そんな蚊の止まる程度の斬撃が入るわけないだろう。私のレベルが幾つだと思ってるんだ、この間抜けが」
駄目だ。付け焼き刃の剣術では牽制にすらならない。
どれだけ威力があっても私では当てることができない。
相手は達人者級の剣士なんだぞ。
不意をつかなければ、攻撃なんて当たるわけがない。
三栗原の剣速なら着弾の寸前に刀を振るっても、悠々と迎撃できる。
そのぐらい剣速に差がある。
くそ、早くも万策が尽きた感がある。
倒せるビジョンも逃げられるビジョンもまるで思い浮かばない。
これはひょっとして詰んだのか…
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