第673話 ヨウメイ奮戦す④
屋外での戦闘とは異なり、屋内戦闘では刀は遮蔽物に引っかかる。
三栗原は筋力で刀を振り回すタイプではない。
技術で刀本来の鋭さを十全に発揮させるタイプだ。
とすれば、屋内戦闘での斬撃は自然と小振りになる。
必殺の【次元斬り】も精度を上げて使わなければ、要塞の基礎を破壊してしまい自分も生き埋めになる。
一方、密閉空間であれば、私は各種毒ガスを使える。
地の利もある。
向こうが私のことを知っているだけではなく、私も三栗原のことをよく知っている。
一方的に私だけが不利なわけでもない。
十分にやれる。
そう決意した私はセーフティゾーンから、身を乗り出し『爆煙の竹筒』を投げつける。
「あはっ、やっぱり出てきた! 超高速演算型NPCといっても、単純よね。ちょっと主人をからかってやったらすぐにムキになる。頭はいいけど、行動原理が読みやすい。NPCの性質からまるで抜け切れていない。所詮は木偶よ」
相変わらず不快な言葉を投げかけてくるが全て無視だ。
もう一度、奴を殺すことだけを考える。
視界は封じている。三栗原は私の位置を捉えていなかった。
初撃こそが最高の好機。
いきなり切り札の『保蔵の竹筒』を使う。
上手くいけば、この一撃だけで殺せる。
お守り代わりに真澄様から一本だけ採取させてもらっていたのだ。
最強のクラスの貫通力を秘めた【黄金烈眞槍】が放たれる。
密閉空間であるが故、回避場所も限られている。
しかし、紙一重の動きで回避される。
体軸さえぶれていない。
完璧な回避だ。
なぜだ!?
私の位置はバレてなかったはず。
しかし、今ので私の位置がバレた。
瞬時に、間合いを詰め、鋭い一撃を放ってくる。
【次元斬り】ではない。単なる斬撃だ。
しかし、達人者級の一撃。
とても避けきれるものではない。
逆袈裟でいいのをもらった。
致命傷ではないが、すごい勢いで血が出ている。
血の温かさまで感じている。
これはまずい。
「ワザワザあんた用にデチューンして、きてやってのよ。誰が【次元斬り】なんか使うか。攻撃力を落として、【状態異常耐性】と【探知】を強化してんのよ。最初からあんたの動きなんか筒抜けだったわけよ」
三栗原は嬉しそうに解説を入れてくる。
口調は丁寧だが、もてあそんでいる様子が消せていない。
骨の髄まで腐った奴だ。
「あんた程度にPKされてしまったせいで、私の人生プランはメチャメチャよ。資産も減った。これから1年はデスペナのせいでレベルアップもできないわ。クラスの奴らには差をつけれるばっかし。1人だけ、置いてけぼりを喰らって、まるで留年した気分よ。どう落とし前をつけてくれるのよ」
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