第672話 ヨウメイ奮戦す③
三栗原は私の名を呼びながら徘徊している。
変態すぎる。
なんで死んでいないのだ!?
私に執着する理由も分からない。
普通は自分を倒した相手には苦手意識を持つものではないのか。
ともかく、混乱する頭を整理だ。
あの【トラップ】から生きているということは防御力が高いのか!?
いや、それはない。それなら、それを全面に押し出して戦闘を行ったはずだ。
考えられる中で最も確率が高いのは一度死んで【蘇生】されたパターンだ。
【蘇生】は極めて困難な術式だと聞く。
条件は厳しく、成功率も高くない。なにより、天文学的な費用がかかるという。
そのぐらいのリスクがなければ、誰も彼もが利用し死の概念が変わってしまう。
一般の人間には存在すら知られておらず、知っている人間も胡散臭い都市伝説として認知されている。
私も半信半疑でしか信じていなかった。
ただ、お頭が妙に自信を持って、その存在を信じていたから私も信じていただけだ。
それでも、損壊していない遺体の存在が最低条件だったように思うが覚え間違えだったのだろうか。
今回のケースでいえば、死体は地中の奥深くに眠っていたはずだ。
発掘は困難だし、五体満足であるはずがない。
異界人ならではの特性があるのかもしれない。
とにかく、手の内を知られている相手と遭遇戦など真っ平ごめんだ。
武器庫は惜しいが諦めてるしかない。
既にステージは達人者級同士の潰しあいに移っている。
今さら一般兵の武器、弾薬があったところで意味はない。
そう無理矢理、自分を納得させ、気取られないよう撤収を開始する。
しかし、三栗原は聞き捨てならない言葉を吐いてきた。
「まさか、逃げるつもりじゃないだろうな~ヨウメイ。そんなことをしたら武器庫はお終いだぞ~それでお前は忠誠を果たしたといえるのか? 春日井はさぞ悲しむだろうな~いや、がっくりするか。有象無象のNPCの中からお前を見出し、可愛がってきたのに肝心なところで逃げるのだからな。無能なNPCとどこが違うのだ」
三栗原は最も痛いところを適切に突いてきた。
本当に私のことをよく研究している。
一部、意味不明のスラングがあったが今のは効いたよ、三栗原。
別に真澄様は私が撤退したところで、文句はいわれない。
武器庫が落ちても私に叱責すらされないだろう。
私が命を落とすことを最も悲しまれる。
そんなことは分かっている。
だが、三栗原に私と真澄様との関係をなじられるのだけは我慢がならない。
これが挑発だということも分かっている。
だが、聞き流せない。
三栗原は異界人だ。
真澄様も異界人だ。
異界人同士通じるところがあるのではないか?
口には出されないがそう思われているのではないか?
悪い想像が次々と浮かび、私の心を締め付ける。
やはり、三栗原は危険だ。
ここで消しておかなければ、精神の安定が保てない。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
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