第669話 急転直下③
「そんな恥知らずな真似をするぐらいなら潔く自決するのだよ」
そう言うやいなや都洲河は手刀で自らの心臓を貫こうとする。
だが、一歩遅く鬼怒川の拘束が成功する。
本当に都洲河の動きが止まってしまった。
「やれやれ、元は君が要塞を落としにきたのに…君の方こそ本末転倒だよ。自分の意思で要塞を落とすのは有りで、他人の操作で要塞を落とすのは無しって、どんだけワガママなのさ~」
気安い口調で鬼怒川は毒気づいている。
「って、流石は【魔王】…抵抗力が半端ないな。全然、支配権を奪えないや。まったく…結果は同じなんだからとっとと受け入れてよ」
鬼怒川は脂汗をかきながら、両手で呪印のようなものを組み制御に集中している。
どうやら、未だ術式は完成していないようだ。
もしかして、今ならやぶるのは容易いのか!?
そう思いついた時には【黄金気】を展開して駆けていた。
別に都洲河を助けようと思ったわけではない。
こいつらも追加で攻めてくるなら、1人削る絶好の機会だと思ったわけだ。
助走をつけ、威力と加速のついた飛び蹴りを鬼怒川に放つ。
しかし、鬼怒川はやすやすと避けた。
なるべく、気配を殺して急加速で攻撃を入れたつもりだったが…
「そして、ここで君の登場か。春日井さん。相変わらず、勘のいい女だ。たった1人で生徒会執行部を敵に回しただけのことはあるよ」
始めて鬼怒川は私を正面から見据え、声をかけてくる。
今の一撃、躱した鬼怒川も見事だが護衛の質ヶ浜もまるで動こうとしていなかった。
この程度の攻撃では護衛など不要ということか。
一度、5対1の状態で実質勝利を収めた経験から無意識に甘くみていたのかもしれない。
都洲河よりは弱いなどと気を抜いていたら、痛い目をみそうだ。
「だが、最大戦力の君をここに引きつけておけるのは悪くない展開だ。僕は都洲河君みたいに一騎駆けなんてしないよ。僕らは皆でマムルークを落とすんだから」
鬼怒川がそう言ってマムルークの方角を見ると四方に人影が走っているのが見えた。
人影は城壁を壊すことなく器用に駆け登っていく。
あれでは防壁が意味を為さない。
まずい。
今、城内でまともに戦える達人者級はほとんどいない。
私が迎撃するしかないか。
そう思い、すぐに引き返そうとするが質ヶ浜に阻まれる。
これまで不動だった彼女がついに動いた。
マムルーク攻略のための時間を稼ぐというより、私を殺す気満々で立ち塞がっている。
きっちり確実に倒しておかないと、先に進めそうにはない。
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