第667話 急転直下①
何だがよく分からないが勝ちは勝ちだ。
そう認めた瞬間、張り詰めていた緊張の糸が一気にきれる。
【聖皇理力】は消え、【黄金気】も消失する。
【神亀の加護】だけが残り、身体に重みが戻ってくる。
私達が勝って講和に持ち込めるならめでたしめでたしだろう。
とりあえず、都洲河の治療をしてやるか。
まずは【神亀の加護】を切らないとまともに動けないか。
面倒くさいな。根性でこのまま行くか。
そう思い、都洲河に近づこうとすると何処からか声がした。
「君がよくても僕らがそういう訳にはいかないんだよ」
次の瞬間、都洲河の身体に無数の刀剣が刺さる。
いつの間にやら周囲に複数の人影があった。
「何の真似なのだよ、鬼怒川?」
都洲河はすぐに首謀者を見抜き、感情を殺した声で疑問を投げかける。
ハリセンボンと言っていいほどの状態だが大したダメージを受けた様子はない。
しかし、【高速修復】が作動していない。
剣に何らかの【術式阻害】の付与がかかっているのだろう。
「もちろん、生徒会執行部のクエストの続きだよ。君が諦めたから、僕らがそれを進めるのさ」
人影から出てきた鬼怒川は飄々とした様子で答える。
クラスメイトを刺したのにまるで動揺が感じられない。
鬼怒川達は都洲河を慕っているように思えたが嘘だったのだろうか。
「春日井との決着はついた。よって、この戦争はこれで終わりなのだよ。俺が我孫子書記長の元に行けば、すぐに停戦・講和だ」
「あくまでも、都洲河君が我孫子書記長の元までたどり着いて、我孫子書記長が停戦命令を出したらの話だよね。そういう事態にならないために、僕らが今こうしているわけだよ」
「我孫子書記長より、大要塞マムルーク攻略の全権は俺に任されている。お前達は我孫子書記長を裏切るつもりか?」
「それは君が大要塞マムルークを攻略するまでの話だったよね。攻略に失敗した今、僕らが君の指揮を受ける謂れはない」
「…」
「ようやく理解したようだね。そもそも戦えない【魔王】についていく者なんていないよ、都洲河君。他を寄せ付けない圧倒的な強さがあったから、誰もが君に一目を置いたのに。こうも簡単に籠絡されちゃって…怖くない【魔王】なんてペットの虎より始末が悪いよ」
都洲河は拘束から抜け出し、鬼怒川に向かって駆ける。
拳に力がのっている【九天必滅】だ。
【魔皇紋励起】は解いているが鬼怒川を殺すには十分な威力だ。
しかし、その拳は割って入った女性によって容易く止められる。
「質ヶ浜、お前もか!」
都洲河の必殺技を止めたのは質ヶ浜だった。
「私達は初の生徒会執行部のクエスト参加なんです。なんとかこのチャンスをものにしたい。それに春日井に受けた汚名返上のチャンス。私は鬼怒川ほど都洲河君に対して含むものは持ってないけど、それでもこのクエストは続けたい。邪魔はしないで」
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