第662話 とある魔王の独白③
兎にも角にも春日井真澄は奇妙な女だ。
そんなことを思いながら戦っていると、ますます迷いが増えてくる。
自分は何のために戦っているのか?
この戦いに勝利して、何の意味があるのか?
他のA組の生徒は春日井への雪辱を果たすため、戦意が高かったが俺のモチベーションは下がるばかりだ。
そのせいで、拳に迷いまで生じている始末だ。
そんな状態で未完成の【魔皇紋励起】が制御できるわけがない。
体内に充満した【魔界の超高濃度魔素】が俺の思考能力を奪っていく。
どういう原理かインフィニット・ステーションの安全装置が作動していない。
【魔皇紋励起】は母なる魔界の中でも最も【魔素】が濃いエリアから【超高濃度魔素】を直接体内に供給する大技だ。
【魔素】とは魔力の精製の重要なファクターの一つと考えられている。
魔素の満ちた地で魔法を使えば、普段は使えない魔法が使えたり、通常の魔法でも威力が強化されるという。
だったら、それを直接、体内に取り込めばいいと考えた者がいたのだ。
事実、【魔素】を体内に取り込めば【身体能力強化】、【魔力強化】など様々な恩恵があった。
しかし、【魔素】とは体外で使うものだ。
体内に取り込むものではない。
当然、そんなことをすれば体内で常時ダメージを受ける。
しかも【魔皇紋励起】の場合、扱っているのは、魔界の【超高濃度魔素】だ。
当然、【身体能力強化】、【魔力強化】などは通常の【魔素】取り込みとはわけが違う。
いわば、超ハイリターン・ハイリターンの戦法なのだ。
皮膚に毒素排出用の文様を刻み、極めて慎重に制御する。
毒素を全て排出してしまえば、強化にならないし、毒素の排出が遅れれば自分が死んでしまう。
元々、暁の12賢人の1人の【オリジナル・スキル】だったようだ。
あくまで噂だが暁の12賢人の1人が【大魔王】のジョブを持っていたらしく、彼はそれを【オリジナル・スキル】として使用していたようだ。
しかし、【オリジナル・スキル】であれば条件さえ揃えば誰でも使えるはず。
そう思って多くの者が試してみたが誰一人使えなかった。
悔しく思った才能あるプレイヤーが【スキル】としての使用を諦め、第三系統外として確立した術法とのことだ。
記録が消失しているのでその才能あるプレイヤーが今、どうしているかは分からないが随分と偏屈者だったのだろう。
そもそも、【魔王】か【魔族】でなければ【魔素】を取り込んだ時点で絶命してしまう。
いわば【魔皇紋励起】は【魔王】か【魔族】であることが発動のための最低条件なのである。
数多ある職業の中から【魔王】を選ぶだけで変人なのに、12賢人のスキルにあえて挑むなどと常人の沙汰とは思えない。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
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追伸:この回はちょっと納得がいってないのでまるごと書き直すかもです。