第66話 ぼっち飯の渚が人間関係の機微について意外と鋭い指摘をしてくる
たった4コマの授業をこれほど長く感じたのは初めてだった。早くエミリーの安否を確認したい。朝のログインの時点で他にできたことはなかったのか。やはり学校は欠席して捜索に専念し放課後になってから渚と合流すべきだったのではないか。
様々な後悔が頭をよぎっては去り、とても授業をきけるような状態になかった。逸る心を抑えて4限目が終わると全速力で8組の教室へ向かった。
いた! 渚だ。教室の外れで独り弁当を食べてる。ボッチ飯かい!
そう心の中で突っ込みを入れると渚の許可も得ず空いてる椅子を勝手に借りて座る。
「早朝からずいぶん悲観にくれた声をしていたが大丈夫だったのか? もっと早くに現れるかと思って待ってたんだぞ。さあ、事情を話せ」
渚が弁当を食べながら話を進める。しまった、購買でなにか買ってくればよかった。いや、自分のことなど後だ。私は渚がログアウトした後の状況を事細かに話した。
「ふむ、仮面の男にエミリーの消失か。人探しクエストはあまり得意ではないんだが・・・やるしかないか。まあ、いざとなれば人探しのプロにクエストを依頼して見つけてもらえばいい。問題なのは仮面の男だ。そんな現実世界に干渉できる能力を持った人間など聞いたことがないぞ。にわかには信じがたいか・・・」
弁当箱をしまいながら渚が続ける。
「しかし、NPCの仲間がプレイヤーの命令なしに勝手にどこかにうろつくというのも考えにくい。私もペットや召喚獣なら長くつきあったこともあるがNPCの戦士とは長く行動を共にしたことがない。喜怒哀楽や使命感も凄かったし、あらゆる意味で埒外なNPCだったな」
渚はあれだけの戦闘を共に戦った仲間なのにやけに暢気なコメントを出してくる。彼女に取ってはNPCの行方など興味が無いのだろうか。
「それこそ、ショウの方が取り扱いに長けていると思うが、ショウには事情を話したのか?」
うっ、痛いところを突いてくる。最初、エミリーがいなくなったとき実はまっさきに祥君のことが頭に浮かんだのだが連絡は取らなかった。彼が信頼して私にエミリーを預けてくれたのにいなくなりました、なんて恥ずかしいことは言えなかったのだ。
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