第658話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃㉖
【聖皇理力】を使い【白気】を強化。
右肘を瞬時に癒やし、再び近接戦闘へ。
とにかく遠距離戦は危険だ。
よもや魔法耐性に弱いとはとんだ弱点だが今は近接戦闘でその欠点を補うしかない。
HPを削りきられれば全てが終わるのだから。
しかし、右肘は完全に治っているにもかかわらず反応が鈍い。
違和感がある。
心に先程の都洲河の言葉が木霊する。
『完全効果など存在しない』と。
外目には完全に治っているが、後遺症判定が効いているのだろう。
完全回復できているが習熟には時間がかかるといったところか。
確かにそういった付加効果を付けておかなければ万能すぎる。
セカンドワールドオンラインにおいてゲームシステムは絶対だ。
完全無欠・完全効果という概念は存在しない。
なぜならそんな概念は現実世界に存在していないからだ。
一見、完全に見えても時間の経過によって完全ではなくなる。
完全であっても条件に当てはまらなくては完全として機能しない。
完全などという概念は抽象的なもので、憧れ求めるものであっても決して得られるものではない。
そんなものを得ようとする者は自身の幼児性を克服できていない証拠だ。
それにそんなものがあってはセカンドワールドオンラインのゲームバランスを壊してしまうだろう。
ゲームシステムはそれを絶対に許さない。
万人に機会の平等を完全に保証する。
それがセカンドワールドオンラインが第4のインフラとして世界に受け入れられた理由だ。
今の私にはマイナスの話だが…
違和感のある右腕で格闘戦を演じる。
しかし、そんな状態で都洲河に挑んでも攻撃は一切当たらない。
逆に面白いように攻撃を喰らう。
マズイ。
徐々に追い込まれている。
最もマズイのはどう戦えばいいのか方策が見えない点だ。
気のせいか【黄金気】の展開にも支障がでてきている気がする。
「ようやく効いてきたのだよ。『望まれし最悪の魔王のローブ』の第2効果。拡散させて使えば【魔王】を除く全ての知性体の【エネルギー転換】を減衰させる。一度きりで使える布の量も限られている。攻撃にも使える超レア装備なのだよ」
よもや、あのボロ布を撒き散らすことにそんな効果があったとは。
マズイ。
マズイ。
マズイ。
【黄金気】まで封じられてしまえば、本格的に為す術がなくなる。
なにか対抗策はないのか。
こんな時、祥君ならどう戦うだろうか。
自分より格上の相手。攻撃、防御、回避、回復に優れ頭もいい。
頭がいいから対応力が凄まじい。
驕ることなく、こちらの強みを消してくる。
私のような低レベルの相手にも平気で高価なアイテムを使い捨ててくる。
こんな相手にどう戦えと!?
って、こんな相手と戦いまくったから、あれだけ強いのか!
敵の総合力に対抗するため、個別の能力を極化させた。
それが祥君の答えだ。
私は自分の持ち味を活かした私自身の答えを見つけなければならない。
しかし、今の発想はいいな。
『こんな時、祥君ならどう戦うか?』
今の閃きのおかげで、戦意が戻ってきた。
戦意が上がれば、アイデアも湧いてくる。
今後はルーティンとして活用しよう。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『楽あれば苦あり。苦あれば、楽有り。けれど、その感情曲線が最近辛い…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。