第657話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃㉕
「いくぞ! 春日井!!」
そう叫んだ都洲河は次の瞬間には私の間合いに入り込んでいた。
早すぎる。
狙いは私の心臓。
両腕をクロスし、なんとか防御を間に合わせる。
お得意の【九天必滅】だ。
だが、先程までとは出力が桁違いだ。
防御の上からでもダメージが入る。
2つ連続で虚を突かれ、あまり面白くない展開だ。
一旦、距離を取って下がる。
「レックレス・ボルト・インターヴェンス」
なっ!?
魔法!?
これまで、ほとんど使ってこなかった魔法を使ってきた。
黒き稲妻が私を襲った。
回避は不可能。
直撃を受けHPが信じられないほど減る。
何故だ!? そこまでの威力はなかったのに。
「やはり、万能であるが故に魔法抵抗力はそれほどでもないか。俺の不得手な魔法でも十分にダメージが入る。【黄金気】は攻撃力強化、防御力強化、身体能力強化、状態異常無効、自動回復と死角がないように見えるが唯一、魔法防御だけはそれほど強化がついていない。属性無視の完全効果など存在しない。四方八方に手を伸ばしすぎなのだよ」
冷たい目をして都洲河は戦力分析を行う。
【第二形態】になってもクレバーさは変わらずか。
私も知らない【黄金気】の特性をあぶりだしてくる。
「この状態。第三系統外、【魔皇紋励起】は俺もまだ、修得しているとは言いがたい。できれば、こんな制御も覚束ないものに頼りたくないが、春日井に勝つためにはやむを得ない。捕まる前に一気に殺らせてもらうぞ」
そう告げると、私に向かって駆け出してきた。
遠距離戦は危険だ。思わぬダメージを受けてしまう。
やはり、危険だが近接戦闘でケリをつけるしかない。
今の私なら【黄金烈眞槍】の精製も容易い。
牽制のために投擲。
しかし、避けることもせず握り潰される。
尋常じゃなく出力値が上がっている。【聖皇理力】と同等なのか。
そういえば、アレも第三系統外だと言っていた。
私のように他者から力をもらうという他力本願のタイプではなく、自力で絞り出すという自力本願のタイプだ。
だとすれば何か【代償】があるはずだ。
それを見つけることはできないのか。
長考していると都洲河はもう目の前にいた。
反応が一歩遅れる。
合わせるように【聖皇理力】で強化された拳を放つ。
だが、そんな甘い球を見逃す都洲河ではない。
躱されただけでなく、関節を極められ右肘を折られた。
なんとか右肘だけで済んだが戦闘中に意識をきると、何をしてくるか分からない。
あくまでも同時並行で処理しなければならない。
今のは私が悪い。
やはり、ブーストされた力が同じなら地力に勝る都洲河の方が有利だ。
となると戦闘系プレイヤーとして私が勝てる要素が一つもなくなる。
弱気がむくむくと育ってくる。
私は本当に都洲河に勝てるのだろうか。
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