第654話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃㉒
第2ラウンドの始まりは唐突だった。
私は出力に任せた大豪音での接近を行うと、瞬時に都洲河の懐に潜り込む。
そうして、三重強化された拳で砲弾のような一撃を放つ。
拳の速さも強化されている。
前回使ったような見切りはもう不可能なはずだ。
予想通り、見事、都洲河のボディに突き刺さる。
だが、都洲河は先程のようには吹き飛ばない。
なにか防御力を上げる【補助魔法】か【スキル】でも使ったのだろう。
鉄板でも殴ったような感触が手に伝わる。
そうして【魔王】の圏内で一瞬でも迷っていれば、すぐさまカウンターが飛んでくる。
【九天必滅】ではない。
手刀だ。
【九天斬滅】
都洲河がそう叫ぶと手刀に【斬撃】の効果が乗る。
ダイヤモンドでも真っ二つにしそうな勢いだ。
打撃力を捨て、斬撃力で私の防御を抜こうという魂胆か。
だが、無駄だ。
根本的に力が足りない。
腕でブロックすると、技を放った都洲河の方がダメージを受けた。
そうして、攻撃に失敗したなら、また、私にチャンスが回ってくる。
一撃でだめなら、二連撃。それでもだめなら、三連撃。
ダメージを与えるまで攻撃を続ける。
渾身の力を込めた拳を何発も都洲河の身体に叩き込む。
だが、防御力が上がった都洲河の装甲が抜けない。
それに運良く抜いたとしても、この程度では瞬時に回復されてしまう。
決定打が足りない。
おまけに互いの相性が悪すぎる。
戦車とユンボが力比べをしているようなものだ。
その後も、都洲河との応酬は続いた。
だが、互いに決め手がないまま、段々と千日手の様相を呈してきた。
HPの減少こそ少ないが、とんでもなく消耗している。
第三系統外の並列展開は思った以上に神経を酷使する。
「いい加減、諦めるのだよ。春日井では俺には勝てない。どれだけ、出力が上がったとしても技が単調すぎる。全神経を防御に集中させれば、防ぐことは難しくない。半永久的に耐えきることができるのだよ。対して君の方は長期戦は不可能。第三系統外の並列展開など無謀すぎる。長続きするわけがないし、どんな副作用や反動があるのかも分かっていないのだよ。どうせ、君の民ではない。君が放りだしたところで誰も君を責めたりしないのだよ」
殴り合いという原始的なラリーの応酬にも飽きたのだろう。
都洲河がいまさら、私の精神を削ってきた。
「それは違うな、都洲河。民から何かを受け取るのではない。自分が民に幸せをあたえるのだ。順番を間違えてはいけない。私が先で、皆が後だ。皆のために働けば、皆はそれに応えてくれる。それは実証済だ。私は私自身の利益のためにこうして戦っているだけだ」
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『リスク管理が本当にむずい。安全に行き過ぎればチャンスを逃すし、積極的にいけばミスった時、ダメージがでかい』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。