第651話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃⑲
なるほど、そんな過去があったわけだ。
助けた少女からは恨まれ、さらに以後、命まで狙われた。
完全な逆恨みだが少女が普通に戦ってもディオには勝てない。
だから、大げさに【聖皇理力】の万能性を謳い冒険者をけしかけた。
そうして雪だるま式に【聖皇理力】の噂は膨れ上がったわけか。
同時に、プレイヤーの存在もあったかもしれない。
【聖竜皇】なら【聖皇理力】を持っていると高位プレイヤーなら自力で着想する。
あるいは他の【高位竜】との契約に成功しており、実証実験が終わっているのかもしれない。
どのみち、【聖皇理力】の噂が出回るのは時間の問題だったということか。
それよりも一番大きいのはディオの心の問題か。
救済と感謝の成功体験があるのに、裏切りと報復の失敗体験によって成功が汚染されている。
感謝と裏切りを同じ人間から受けているのは聞いているだけでシンドイ。
だけど…
(他人に感謝を求め過ぎなんだよ、ば~か。1回裏切られただけで人間を評価すんじゃないわよ)
あえて挑発的な言い回しを選び、ディオの目を覚ます。
「ビビってんじゃないわよ、ディオクレティアヌス。私は死なない。裏切らない」
ディオの心の中心に届くよう、あえて肉声で語りかける。
「たとえ、ここで【聖皇理力】の負荷に耐えきれず死んでも私はあなたを恨まない。そして、【聖皇理力】の制御に成功したらあなたを裏切った少女を探しにいきましょう。あなたが間違ってるんじゃないのよ、あなたを裏切ったその少女が間違っているのよ。きっちりと詫びを入れさせる必要があるわ。それが終わったらあなたの人間への評価も一変させてやるわ。裏切った少女のマイナス分もあわせて私が収支をプラスにしてやるわよ」
(やはり、主殿は他の人間とは一線を画しておるな…)
竜の皇がなにか自分より上位存在を見上げるような面持ちで呟いた。
(委細承知!)
もはやディオの言葉に迷いはなかった。
(だが、今の主殿に全ての【聖皇理力】を渡せば、間違いなく死にます。我輩がリミッターとなり、お守りいたそう)
そう言うとディオが召喚されてくる。
いつもの見上げるほどの巨体ではなく、中型犬ほどの大きさで現界してきた。
まるでミニドラゴンだ。
「ディオ…その姿は…」
「これが以前より主殿から出された課題の答え。そして、【聖皇理力】コントロールの秘訣です」
ミニドラゴンとなったディオだが大きさが変わっただけで特段の変化はない。
「自らの身体に封印を施し、【聖皇理力】の最大出力をコントロールしています。同時にダウンサイジングを実現しました。しかも封印には【理力強化】の式が組み込んであります。この状態が続けば続くほど、リミッターを外したときの我々はさらに強くあれます。そして何より、これで一緒に戦うことが可能になりました」
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