第65話 水無瀬由香里は語る顔色と空腹の関係について
「ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ」
耳障りな音がインフィニットステーションからこだまする。
いつもいつもイラつくので、そのたびに音を変え結局2日もすれば馴れてまた別の音に代えているのだがこの音を聞いたのは今日で3日目な気がする。
なぜだ? しかも今日はいつもより1時間ほどタイマーが鳴るのが早い気がする。
そうか!
ログインできず、寝落ちしてしまたったのか。
寝落ちする前にタイマーだけはかけておいたのか、えらいぞ、私!
周囲を確認すると電力は見事に復旧している。
女としての矜持を保つためにシャワーだけは浴びて早速ログインする。
考えてみれば昨日から何も食べていない。
誰か注意してくれよ。
学校が始まるまで後、1時間、ギリギリ間に合う。
なんとかエミリーの無事な姿さえ確認できればそれでいい。
「エンターザセカンドワールド」
ログインすると、エミリーが泊まっているホテルが目の前に出現できた。
ここで仮面の男と出会い、偶然、停電が起きて現実世界に強制送還されたんだ。
あの停電は本当に偶然だったのか?
けれどゲーム世界のおそらくNPCが現実世界で停電を起こすなんてことが本当にできるのか?
いや、今はそんな問いはどうでもいい。エミリーを探さねば。
周りをみたすが、やはり、この場にはいない。
屋外で待っているわけがない。
ということはホテルに戻ったのか。
ホテルに駆けつけ、エミリーが宿泊しているかどうか尋ねるが昨日は宿泊していないという。
くそう、どこへ行ったんだ。
そうだ、内部通信(気)だ!
なんでこんな簡単なことを忘れていたんだ。
内部通信(気)でエミリーを選択しようとしたがのっていない。
どういうことだ?
パーティーから外れたということか?
ならギルド通信は?
ダメだ。こちらもエミリーの存在が抹消されている。他に手はないのか?
そうだ、天都笠さんに聞いてみよう。
(おおっ、真澄か? おはよう。昨日の停電はすごかったな~えっ!? エミリーがいない? 攫われた? おちつけ、電話口では分らん。もうすぐ学校だろう。学校で詳しく話せ)
時計を見るともう40分ほど経っていた。
確かにこのままでは遅刻する。
いっそ、このまま学校をサボって探そうかとも思ったが探すあてがない。
口惜しいが天都笠さんを頼るほかはないだろう。
未練を残しつつログアウトし身支度を整え、出発する。
自分でも明らかに分かるほど体調が悪い。
遅刻ギリギリで学校に到着し、クラスメイトに挨拶しながら教室に入る。
鞄をおいてすぐに天都笠さんのところへ行きたいがもう数分で1時限目が始まる。諦めて昼休みに話すしかないか。
私が期待を折られ気落ちしていると横から声がかかった。
水無瀬さんだ。
「春日井、顔色最悪だよ~鏡見てから登校してきたの?」
普段はあいさつと事務的な会話しかしない彼女からぶっきらぼうな声がかかる。
そんなに顔色が悪いのか?
彼女が手鏡を貸してくれたので見てみるとウワっ、最悪だ。
ここまでド直球で私に声をかけてくれるのはこのクラスでは彼女しかいない。
「ありがとう。ちょっと遅刻しそうだったから朝、抜いてきたんだ。おなかが空いてるだけだから大丈夫だよ」
「ふーん、じゃあ、これをあげるよ」
そう告げると私になにかを投げて、水無瀬さんは席に戻った。
コンビニおにぎりのツナマヨネーズだった。
私はありがたく包みをやぶり三口で食べきると少し元気が出てきた。
思わぬ貸しを作ったな水瀬瀬さんに。
今度からもっと優しく接しよう。
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