第649話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃⑰
万能の力であるが故、扱う人間の心と身体を壊す。
人間では耐え切れない絶対的なエネルギー体。
それが【聖皇理力】、第三系統外の正体か。
しかし、私に限っていえば制御できる自信があるのだ。
耐えきるだけの身体はステータス上、作れる。
後は心の問題だ。
そうなると問題はディオクレティアヌスの説得か。
随分と怒っている。
いや、冷めているといった方が正しいか。
ひどく態度を硬化させている。
あまり、深い入りすれば【主従契約】すら切られてしまうかもしれない。
そうなるとこの戦争における切り札すら失うおそれも出てくる。
だからといって諦めるという選択肢は残されていない。
ここで諦めたら命賭けで足止めしている3人に申し訳が立たない。
逃げるわけにはいかない。
ぶつかるんだ。
飾らず自分の言葉で、自分の想いを伝えるしか活路はない。
(ディオクレティアヌス…いや、長いから、もう、ディオでいっか。【聖皇理力】を求めた人間が全て俗物で欲深な人間だって言ったけど、それは違うんじゃないかな。中には子を救いたい親や、病気の恋人を救いたいと思った者、いろんな人間がいたんじゃないかな。それらを全て俗物な人間だと片付けるのは違うんじゃないかな。ディオの言う通り万能の力に憧れ、ただ、ディオを殺そうとした人間もいたと思う。けれど、自分以外の誰かのために【聖皇理力】を求めた者だって絶対にいたと思うよ)
(そんな違いは我輩には関係ないこと…理由がなんであれ、寝ている我輩の寝所に立ち入って、【聖皇理力】を奪おうとしたことには違いありません…)
(けれど、ディオが誰かのために動こうとした人間を否定するのはおかしいよ。だって、君はこんなにも私のために働くことを喜んでいるじゃん)
(…)
ディオクレティアヌスは何の言葉も返してこなかった。
私の指摘が図星なのか、私に愛想を尽かしたのか。
いずれにせよ、私のやることに変わりはない。
(聖竜理力を狙ってなんの謂れなく、君を殺そうとした行為自体は間違っている。君は本当はそんな人間を殺すことも嫌がったんじゃないかな? 礼に則って神殿を訪ね、事情を話せば、意外と簡単に【聖皇理力】を分け与えてくれたんじゃないの? そう思っていたのに、やって来るのは盗賊まがいの人間ばかり、それが悲しかった。今の君の在り方はその反動なんじゃないの?)
(我輩はそのような…)
ひどく狼狽したような声でディオクレティアヌスは叫ぶ。
だが、全てを言い終わる前に私はくいぎみで殺しの言葉を滑りこませる。
(だったら、どうして【聖皇理力】が万能の力だって人間が知ってるのさ?)
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