第641話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃⑨
圧倒的なエネルギーの奔流が都洲河とフェビアンを襲う。
【赤量裂波砲】とは比較にならないほどのエネルギー量だ。
このままでは本当にフェビアンもろとも死んでしまう。
大丈夫なのだろうか?
「【白潔増晶の鏡】」
フェビアンがそう叫ぶと結晶のような物体が私達の中間距離に突如現れ、私の【黄金気弾】を全て吸い取った。
次の瞬間、結晶から集束されたレーザーのような一閃が放たれる。
本当に一瞬のことで気が付けば、都洲河の頭部はレーザーによって焼かれていた。
脳漿をぶちまけ、肉片を撒き散らしている。
頭部を失った都洲河の肉体は自重を維持することができず、その場に倒れ込む。
終わりは随分とあっけないものだった。
「凄い技だったね、フェビアン。まさか、あんな隠し球を持ってるとは思わなかったよ」
本当に死んだのか? 半信半疑だったが、【気】はゼロになり、回復する様子もない。
なにより、頭部を再生させなければ、以後の活動は不可能だ。
その兆候がない以上、やはり死んだのだろう。
意識をフェビアンに戻し、苦労を労う。
「お前の【黄金気弾】のエネルギー量が凄まじすぎただけだ。結晶も破砕してしまったし、100%エネルギー変換も成功しなかった。元々、【気弾】向けの防御技に過ぎなかったからな。それを派生させて【エネルギー変換】と【照準補正】を組み込んだ。お前に負けてから思いついた技だ。いつかリベンジしてやろうと研究してた技だが、こんな土壇場で使う羽目になるとは思わなかったよ」
照れ笑いのようなものを浮かべているが内心は複雑なのだろう。
対私用の切り札を私に見られていては世話はない。
さらに【魔王】を倒せたことより、自分の意図した通りに技が発動しなかったことにも不満を感じているようだ。
面白くなさそうな表情で都洲河の亡骸を見ている。
一方、クーリッジは都洲河の亡骸の側で倒れこんでいた。
それだけ疲弊していたのだろう。
獅子奮迅の活躍を見せたが最後にオイシイところを私とフェビアンが盗ってしまった。
それがショックだから立てないなんて駄々をこねないだろうな。
「クーリッジ、勝者が情けない顔を見せるな。勝者は常に評価される。勝者には人前での安息など許されていない。お前のそういう姿はせっかくの高評価を落としてしまう。分かったら立て。自分の実力不足を嘆いたところでどうにもならん。悩む暇があったら、模擬戦でもしろ。戦って戦って戦って、戦った先に真理がある。止まっていては朽ちるだけだ。まあ、俺なら幾らでも付き合ってやるから…」
不安に思いながらも声をかけに近づくとフェビアンが先に発破をかけてくれた。
まるで父親のように優しくも厳しい叱責だ。
いつの間にここまで仲良くなったのだろう。
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