第639話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃⑦
「やはり、なんとか動きを止め、奴の防御力と回復力を上回る攻撃を放つしかないだろうな」
フェビアンが何かを悟ったような表情で言ってくる。
「悪いが遊撃と回復は中止だ。自分の身を守ることも考えた遊撃の攻撃じゃあ、ダメージが入らねえ。幾ら回復しても、それ以上のダメージを永続的に負ってくるなら待つのは死だけだ。俺も前衛攻撃に専念する」
ということは私が防御と回復役か。
今の都洲河の攻撃であれば、【神亀の加護】でなんとか防ぎきれる。
動きも、そこまで早いわけではないからカバーにも難なく入れる。
問題は奴の必殺技だ。
玄導の甲羅を砕いた【七天鋼魔挫滅】。
精霊にダメージを入れた【六天白克魔生滅】。
さらにそれ以上の攻撃を持っていた場合、私では防ぎきれないかもしれない。
「なら、僕が【魔王】の動きを止めます。手段さえ選ばなければ幾つか方法はあります」
決死の覚悟を持ってクーリッジが言ってくる。
「死に急ぐなよ、クーリッジ。世の中には絶対に勝てない相手ってのが存在する。生きてさえいれば、また挑戦できる。引くことも一つの勝利だぜ」
フェビアンはそんなクーリッジの決意を嘲笑うかのように男臭い笑みを浮かべる。
全員の覚悟が決まった。
「【赤量裂破砲・甲】」
圧倒的な赤の奔流が都洲河を襲う。
私達と会話をしている時からチャージを始めていたのだろう。
貯めのモーションに入っているのが見えていた。
だが、いくら不意打ちだからといって、ああもあからさまなチャージだと誰でも気付く。
相手がハイランカーであれば尚更だ。
しかも、貯めが十分でないのかホテル・ソウコクハンでの戦闘の時よりも威力も速度も低い。
都洲河も警戒していたのだろう。
らくらくと避けた。
「【赤量裂破砲・乙】」
ノータイムで第二波が放たれる。
一発目は囮か。
都洲河の避けた先に第二波が着弾する。
しかし、それすらも都洲河は難なく避ける。
都洲河相手に中途半端な遠距離攻撃は意味を為さない。
アイツは撃ってから避けることが可能な高度な見切りを習得している。
だが、その瞬間、クーリッジの【赤量裂破砲・乙】が都洲河の回避した方向に曲がる。
あろうことか避けた都洲河を追いかけている。
あれだけの威力の攻撃に【自動追尾】を組み込んだというのか。
それでもクーリッジの攻撃は終わってはいない。
なんと、未だ放出されている【赤量裂破砲・甲】の射出角を無理矢理変えたのだ。
もちろん、変更した先には都洲河がいる。
「【赤量裂破砲・丙】」
最後の一撃はなんの変哲もない直線的な一発だった。
それでも最高速度と最大威力を秘めていた。
奇しくも全方位攻撃に近い回避不能の攻撃が炸裂し、ようやく都洲河にダメージが通った。
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