第637話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃⑤
しかし、考えてみれば祥君はどうして都洲河のスタイルを目指さなかったのだろう。
都洲河は自分で祥君の方が上だと評価している。
社交辞令とか言えるタイプではない。
都洲河の評価では、まるで相手にもならないくらい祥君の方が強いらしい。
確かにトップランナーの中に【プレイヤーキルマイスター】の名前はあるが【魔王】の名はない。
だが、私の目には2人の違いが分からない。
どちらも完成された強さを持っている。
いや、どちらかといえば、都洲河の方が隙のない強さを持っているように思える。
祥君は回避に特化しすぎており、攻撃が当たりさえすればワンパンで落ちる。
それこそ、私でも落とせるレベルだ。
逆にその分、攻撃力は祥君の方が上だと思うが…
そうか、それが答えか。
祥君はわざと防御力を鍛えなかったのだ。
そんな時間があれば、回避と攻撃を強化する。
戦闘中に回避行動と防御行動、両方を同時に取れやしない。
取れるのはどちらか一つのみだ。
だったら、回避のみに特化し、防御は捨てる。
どんな攻撃も当たらなければ意味がない。
相手の攻撃が入る前に特大の攻撃力でPKしてしまう。
そうして戦場を支配する。
極大のリスクを取ってトッププレイヤーを相手に極大の経験値を貯めてきた。
それが祥君の戦闘スタイルなんだ。
翻って都洲河は中途半端なのだ。
器用貧乏と言い換えてもいい。
回避、防御、回復、攻撃と全ての要素に隙がない。
隙はないが極化した強みもない。
才能が同じだと仮定すると、祥君はその才能を対人戦闘に特化させた。
都洲河は全てのパラメーターを均等に配分した。
それが結果となって現れた。
だが、それが分かったとしてどうする?
分析はできる。しかし、対応ができないという情けないシチュエーションに追い込まれる。
そうこうしている間に都洲河はクーリッジへの順応を確実に進めてきた。
クーリッジの必中攻撃が空を切るパターンが増えてきた。
それがクーリッジに焦りを与えている。
防御を捨て、全力全開で攻撃を行っているのに当たらない。
次第に一か八かのおお振りが増えていく。
傍目から見ても攻撃が雑になっていくのが分かる。
ついに自分の攻撃にバランスを崩し、決定的な隙を作る。
それを見逃す都洲河ではない。
魔力の乗った渾身の右ストレートが放たれる。
私はその間に入り込み、クーリッジを守る。
外から眺めることで、冷静な判断ができた。
だが、攻撃が入らなければジリ貧だ。
負けなくても勝てない状況に変わりはない。
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