第636話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃④
「春日井が前衛防御、俺が回復と遊撃だ。クーリッジ、お前が前衛攻撃だ。お前が【魔王】の首を取れ。出し惜しみはするな、周りに気を配るな、自分の防御も考えるな。俺達が全力で合わせる。ひたすら、攻撃だけを考えろ。守勢に傾けば、その瞬間、全滅が確定する」
フェビアンが適切に指揮を取ってくれる。
同意なく壁役を割り振られているが文句はない。
どのみち、私の攻撃は当たらないのだ。
だったら、盾役に徹した方が潔い。
問題はクーリッジに合わせろという点だ…
しかも、自分の防御まで捨てて攻撃に徹しろって…
そのぐらいの気迫がなければ、【魔王】と互角の勝負をするのが難しいのは分かるが無茶な指示である。
クーリッジの動きを見ながら、都洲河がどう動くかを見なければならない。もちろん、フェビアンの動きもだ。
私自身も動かねばならないし、かなり高度な並列作業を要求される。
「安心しろ、お前の『桂林一枝』なら必ず攻撃は通る。【魔王殺し】の称号を手に入れるチャンスだ。気負わず突き進め」
その言葉を聞いたクーリッジは頬を緩ませた。
久しぶりになんの制約もなく、好き勝手動けるのだ。
しかも、相手は最強の敵。
彼に取っては待ち望んだ瞬間なのだろう。
それはフェビアンも同じはずだ。
自分より強い敵、自分が絶対に敵わない敵というものをどこかで望んでいたはずだ。
口火を切ったのはやはり、クーリッジだった。
突然、駆け出すと【青気】、【黒気】、【白気】、【赤気】の四種類の【気】を纏い突進していく。
『桂林一枝』には【剣気】まで纏わせてある。
五種類の【気】の同時展開とは本気がすぎる。
果たして、クーリッジの斬撃はまっすぐ都洲河の首を狙っていた。
都洲河は最小の動きで回避。
私の時と違って紙一重の動きで回避しないのは、まだ、クーリッジの動きを見切ってないからだろう。
それが幸いした。
都洲河の首筋に赤い2本の線が刻まれる。
『桂林一枝』の効果、同時斬撃×3だ。
ひと振りで3本の斬撃効果が発生する。
初見であれを見切るのは不可能だ。
ということは今のを完璧に入れていたら勝っていたのか!?
惜しい使い方をしたと後悔がよぎる。
都洲河は不可思議な表情をしつつ、間合いをあえて大きく取ることでクーリッジの攻撃を回避している。
クーリッジの剣の腕も相当なはずなのに、防御に任せた動きを取っていない。
不可思議な攻撃を喰らうことを避け、回避に専念している。
そうして、クーリッジの太刀筋を冷静に観察している。
見切りもでき、回避もでき、防御も一流、さらに【高速修復】まで持っている。
その上、頭も切れる。
こんな相手をどう攻略すればいいというのだ。
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