第635話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃③
一方的に私がタコ殴りされる展開が続く中、突如、都洲河は弾かれたように後方へ大きく跳んだ。
跳び退いた跡にはフェビアンとクーリッジが同時攻撃をしかけていた。
「やはりな…来るのは分かっていた。戦士としての春日井にはそれほど脅威は感じない。真に恐ろしいのは、その器量だ。俺をも屈服させる弁舌とビジョン。その輝きにどれほどの人間が魅かれたことか。当然、春日井が窮地に立てば、信者達が黙っていないだろう。1人を釣れば、後は踊り食いだ。どこまで増えるか楽しみなのだよ」
1対3の状態になっても都洲河に焦りの色はない。
私達3人を相手にしても勝てるつもりなのだ。
そこまで、都洲河と私達にはレベルの差があるのだろうか。
「戦闘になるって話は聞いてなかったぜ、春日井。おかげでヨウメイの機嫌は最悪だ。後で謝っといてくれよ」
フェビアンはまるで、知人から伝言でも頼まれたように軽く告げる。
絶対に勝てない相手だと自分で都洲河を評していながら、怖れの色が全くない。
「簡単にはやられないと言ってながら、酷い有様じゃないですか、真澄さん」
一方、クーリッジは私のことを随分と心配してくれているようだ。
念願の魔王との戦闘なのにちっとも喜んでいない。
最近、そこそこ強いやつとの連戦が続いたせいで興味が失せたのだろうか。
この2人がやってきたのは卓越した【白気使い】だからだろう。
魔王の【瘴気】が充満する中でも、問題なく動ける。
「しかし、【魔王】か…これほどの相手なら下見、偵察、訓練、で一ヶ月は準備をしたかったぜ」
フェビアンは【魔王】を相手にしても不敵な笑みを絶やさない。
勝つ算段でもつけてきてくれてのだろうか。
「本当に近づくだけで、体力が消耗していきますね。戦闘開始前とまるで違う」
クーリッジもフェビアンの軽口でようやく、本調子に戻ったようだ。
【魔王】攻略のための戦術をシュミレートし始めている。
「噂に聞く【全体効果系】のスキルってやつか…こんだけ、強いのにみみっちい【スキル】だな…なんで、こんなちんけなスキル使ってくるんだ?」
挑発のつもりだろうか、フェビアンはわざと大きな声で感想をもらす。
「雑魚を相手にしてもキリがないためだよ。自分より格下の相手には恐怖と痛みを与える。そうして振るいにかけ、強者のみ相対を許す。かくして魔王の名声は作られるのだよ」
おそらくフェビアンの口撃は単なる牽制だったのだろうが、都洲河は実に律儀に質問の内容に答える。
戦闘中でもこういった生真面目さを崩さないのが都洲河の特徴なのかもしれない。
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