第634話 春日井真澄VS魔王:都洲河廣晃②
私は一旦、後方に大きく跳び、間合いをあける。
都洲河は追ってこない。
安堵の溜息をつくと、都洲河の方から話しかけてきた。
「生徒会執行部のクエストの時より、格段に強くなっているのだよ。その成長速度は驚愕に値する」
左腕を庇いながら都洲河は呟く。
すでに左腕の回復は始まっている。時間稼ぎなのかもしれない。
息を整えたかったのはこちらも同様だ。
最強の必殺技を会心のタイミングで放ったのに腕一本しか奪えなかった。
早くも追い詰められた格好だ。
ここはのっておこう。
「そっちこそ、あのタイミングで【黄金烈眞槍掌】を止めれるとは思わなかったよ。あれは【魔王】としての勘なの?」
「フェイントもなく、あんなバレバレの動きでは何かあると喧伝しているようなものなのだよ。牽制で入れた左腕をまるまる持っていかれたほうが驚きなのだよ。『魔王装備』のおかげで防御力が上がっていなければ上半身ごと吹き飛ばされていたのだよ」
早くも【高速修復】が完了したようだ。左腕が元通り蘇っている。
左手の感触を確かめながら都洲河はポソリと言った。
「しかし、戦ってみて分かったことだが…素人臭さがまだまだ抜けていない。ただ、俺に致死量の攻撃を与えられるだけというなら、それほど脅威でもない」
そう言うと、再び間合いを詰めて突進してくる。
引き剥がそうと【白気散弾】を打つが当たっても構わず突進してくる。
「高出力の一発には警戒しなければならないが、それ以外はどうということもない。固定砲台とバトルしていると分かれば、打つべき手は見えてくる」
あっという間に間合いに入られ、右ストレートを顔面にもらう。
なんとか踏ん張り、こちらも【黄金気】で強化した拳を放つが当たらない。
全て紙一重の動きでかわされる。
一方、向こうの攻撃は面白いように当たる。
【聖竜皇の竜眼】が機能していない。
私に認識が決定的に遅すぎるのだ。
従って殴られっぱなしという形になる。
【神亀の加護】が働いているから、それほどHPは減らないが…
このままではジリ貧だ。
防御に徹しさえすれば、この程度の攻撃、屁でもない。
しかし、こちらからも攻撃して打ち勝たない限り、ただのサンドバッグだ。
都洲河は派手な大技を使うことを止め、削りにきている。
純粋戦士として振る舞えば、戦闘経験値の差が如実に出る。
都洲河は私が動いてから、行動を変えても悠々と間に合うのだ。
完璧に後の先を取られている。
だから、こそ判断に迷う。
【神亀の加護】を解き、速度を上げ都洲河と肉薄するか、このまま防御重視で戦うべきか。
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