第629話 魔王降臨③
こんなに揉めるなら、携帯のアドレスを都洲河に渡しておけばよかった。
ヨウメイは自分の策を却下するなら、ここで自分を斬り捨てていけと言わんばかりの迫力だ。
どうしたものか…
「そんなに言うんだったらさ~ヨウメイもついて行けばいいじゃん」
クーリッジがいつものように空気を読まずのんびりとした様子で言ってくる。
早く【魔王】と戦いたいのだろう。
「五月蝿い! 黙れ、クーリッジ!! 私は今、大事な話を…キャ」
了承も得ず、クーリッジはヨウメイを抱え、城壁を駆け下りる。
ナイスだ! クーリッジ。
クーリッジの天然が上手い具合に作用した。
いや、違うかあれは私に配慮してくれたのかもしれない。
とにかく、後で褒めてやらねば。
さて、私も行くか。
と、その前に。振り返り、幹部達の顔を見る。
全員が不安そうな顔をしている。
「皆、ゴメン。行ってくる。みすみす殺られるような事態にはならないから安心して」
ヨウメイと同じで納得はしていないのだろう。
だが、引き止める者はいなかった。
皆、私の身を案じながらも信用してくれている。
その反応を了承と受け取った私はすぐさま、クーリッジの後を追った。
◇◆◇
都洲河の元にたどり着くと、ヨウメイとクーリッジは既に臨戦態勢に入っていた。
流石に至近だと【魔王】の【固有スキル】の効果が色濃く反映するのだろう。
ヨウメイが凄い量の汗をかき、苦しそうに肩で息をしている。
都洲河は瞑目し、2人をまるで相手にしていない。
私が近づくとようやく、瞳を開けた。
「久しぶりだな、春日井。先程の挨拶には恐れいったよ。やはり、春日井との交渉は一筋縄ではいかないということを思い出させてもらったのだよ」
都洲河は低く深い声で語りかけてくる。
相変わらず感情が読めない。
しかし、先程の土砂崩れがまるで効果がなかったということはハッキリ確認できた。
「都洲河、この子が怯えている。その【固有スキル】って切れないの?」
もはや、ヨウメイは過呼吸寸前で交渉前から死にそうだ。
敵である都洲河にこんなことを頼むのはおかしいが頼まずにはいられなかった。
「悪いが常時発動だ。『魔王装備』の影響で加減が難しい」
「『魔王装備』ってそんな武装、実在してたんだね」
「まあ、使い手を選ぶ装備ではあるな。しかし、これらの装備が実在することで【魔王】の存在に確信が持てた。なかなか思い出深い品なのだよ」
「へえ~ドロップ? オーダーメイド?」
ヨウメイの体調回復のためにも、少しでも時間を稼ぐ。そう方針を転換し、話をつなぐ。
「コイツはドロップなのだよ。銘を『望まれし最悪の魔王のローブ』という。職業:【魔王】を持つ者のステータスを飛躍的に増大させる。さらに状態異常完全無効化(小)も持っている。だが今日のコーディネートはそれだけではないぞ。赫羽根作の『天地冥殺』も装備している。俺は今日、いつも以上に本気だぞ、春日井」
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