第628話 魔王降臨②
「今朝、早起きしたら手持ちぶたさになったので戦術プランの作成の片手間に作って置いたのです。一度、作った仕掛けなので簡単でした。協力してくれるスタッフも多かったですしね。最強だか何だか知りませんが、敵の城を前に警戒もせずに乗り込むからこうなるのです。さあ、帰って作戦会議の続きをしましょう」
土砂崩れを見ながらヨウメイが淡々とした表情で呟く。
肝が座ったな、ヨウメイ。
作戦立案から、あんなトラップの作成までこなすとは。
しかし、誰もヨウメイの後に続こうとしない。
最近、私にもおぼろげだが分かるようになってきた。
都洲河のエネルギー総量にほとんど変化がないことを。
果たして、都洲河は土砂の中から出てきた。
【高速修復】すら作動していない。
以前のグレゴリウスの『聖魔の十字架』以上の攻撃力だった。
となるとあのローブの効果か。
やはり、ハイランカーだけあって装備集めにも余念はないか。
無手状態でもあれだけ強いのに最強の防御力とか卑怯すぎる。
土埃を払うような仕草を終えると突然、都洲河は私を呼んだ。
「春日井! 降りてこい! 話があるのだよ!」
それだけ、言うとその場で腕を組み微動だにしない。
いまさら、話すことなど何もないが恩義のある人間ではある。
私が応じようと城壁の手すりに脚をかけようとするとヨウメイが必死の形相で静止しようとする。
「待って下さい、真澄様。行ってはなりません。相手は達人者級を超えた怪物級です。リスクが高すぎます」
「どのみち、応じなかっても都洲河は乗り込んでくるよ。結果は同じだと思うけど。私が出るのが最も兵の生還率が高い。それはヨウメイも分かってるじゃない?」
「だとしてもです。それは必要な犠牲です。こちらの敗北条件は真澄様の死去です。だとしたら、それを避けるため私達が肉の壁となってあなた様をお守りする。それが最も効率のよい用兵です。我が軍全ての兵士が死んだ後、あなたは死ぬべきなのです。あなたは大将なんですよ。繰り返しますが行くべきではありません!」
ヨウメイは一切、引かない。
声に力が乗っている。言葉で私をねじ伏せる気だ。
ヨウメイの言い分にも一理ある。
しかし、相手が都洲河である以上、生半可な供を連れていっても無意味だ。
この中で辛うじて戦力になるのはフェビアンぐらいか。
後の人間は都洲河の攻撃力に耐えきれず、死ぬだけだ。
それに都洲河は本当に私と話をするためだけに呼んでる可能性が高い。
なんとなく、そんな気がする。
アイツの持ち味は変わらない愚直さにある。
私を釣りだして罠に嵌めようなんて器用な真似はできないと思うが。
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