第62話 軍人総理候補天湘院鋼葉は語る暁の12賢人について
「ずいぶんと謙遜した言い方をするね、生仁目さん」
真澄たちが情報管理局から引き揚げたのを確認すると1人の男性が生仁目に声をかけた。
「そういうあなたは戦後初の軍人総理大臣候補と名高い天湘院鋼葉さんじゃないですか。供もつれずにどうしてこんなところにいるんですか?」
「わたしにだってプライベートくらいあるさ。仮想現実ぐらい自由に歩き回りたいよ。それに軍人総理大臣候補と持ち上げてくれるが、わたしはただ、アメリカとの併合を画策する【純粋効率派】に対するアンチテーゼとして担がれてるだけだよ」
「本当ですか、担がれているだけのお神輿が第7階層の上級神と手を組んだりするんですか~自勢力の拡大のためとはいえ、危険な真似をしますね。狙いはやはり、【泣かない乙女】ですか。獅子座の元総理にでも頼めばいいものを」
「彼は功績こそ素晴らしいが、ゲームマスターではない。暁の12賢人の1人ではあるが単なるプレイヤーにすぎない」
「【泣かない乙女】は危険極まりないプログラマーですよ。ゲームマスターの力を利用するって言いますがあいつのご機嫌しだいで世界恐慌とか簡単に起きますよ」
「そういう危険な人物を手のひらで転がせてこそ総理大臣候補の面目躍如だよ。最も現状は彼女とコンタクトを取ることすらできていないのだが。幼馴染の君がさっさと【泣かない乙女】を呼び出してくれれば話は簡単だったのに」
「私程度の呼びかけで答えてくれる程、人間的な存在じゃありませんよ。彼女は思考の次元そのものが常人とはまるで違うんですから。けれど確かにもうフルダイブして5年ですね…合法的に祥君って【プレイヤーキルマイスター】が出てきたからブラコンの12賢人、【泣かない乙女】も出てくる可能性はありますね」
「神出鬼没の【プレイヤーキルマイスター】が表にでてきたことで時代が動いたのだよ。元々、この街には彼女の肉体があるということで神聖視されていたが、【プレイヤーキルマイスター】が出てきたことでさらに重要度があがった。【プレイヤーキルマイスター】が必ず動くと踏んでこの街で準備を進めていた者も多いだろう。今後、この街にはさらなる異能のプレイヤーが集まってくるよ。頑張りたまえよ、生仁目君」
そう激励すると男はログアウトして消えていった。
「一体何しに来たのやらあのおっさん。けど、私は祥君よりも真澄ちゃんの方が気になるんだけどな。システムに愛されすぎてるというか、仕組まれすぎているというか。コレもあいつの仕業なんだろうか、いい子なんだから妙なことにならないといいんだけど」
生仁目は独り、大きなため息をついてそうつぶやいた。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿は13時から23時の間に投稿すると思います。よろしくお願いします。ブックマークや感想、評価などありましたら軽い気持ちでお願いします。




