第617話 次元斬り剣士の焦燥③
いずれにせよ、超高速演算型のNPCと遭遇したらたとえハイランカーであっても警戒するのが常識だ。
高レベルのNPCやハイ・ステータスのNPCとは違った脅威がある。
NPXCとすら違っているのだ。
NPXCはトリッキーな攻撃を、超高演算型NPCは最善最強の一手を放ってくる。
まるで古参や歴戦の兵士を相手にしているような感覚を味わうという。
おそらく、成長して膨大な知識を持てばNPXCより、超高演算型の方がやっかいだ。
私は超高速演算型との戦闘は始めてだ。
長時間の戦闘を行えば、私自身すら理解していない癖や特性まで丸裸にされてしまうかもしれない。
先程も妙な道具で腕が吹き飛ばされた。今から春日井を追いかけても間に合わない。
慢心を捨て、この一合で戦闘を終了させる。
【次元斬り】とはその名の通り、刀で次元を斬っている。
私達がいる今次元に次元刀で切れ目を入れ、次元の隙間を意図的に発生させることで対象にダメージを与えている。
次元空間に切れ目を入れるほどの技量。
次元空間に切れ目を入れられる武器。
2つが揃って始めて【次元斬り】が完成する。
接近戦が極めて危険なのに、あえて接近戦を選んでくるのは武器破壊が目的なのだろう。
狙いはもちろん『朦朧次元刀』。
次元刀シリーズの一つで再入手は不可能だ。
元々、次元刀なんて激レアアイテムは市場には出回らない。
オークションにすら取り上げられず、アンダーグラウンドの取引で数年に一度出るかどうかというレベルだ。
私が手に入れられたのは完璧な偶然。
懇意にしていた商人が資金繰りに困り、今すぐ現金化したいということで買い取った品だ。
それでも一億ぐらいした。
然るべき場所で売買すれば買い取り金額の100倍の値段がついてもおかしくない。
とても優秀な商人で信用していたが決済は半信半疑で行った。
その場で試してみたが、もし贋作であったなら無限PKでぶち殺してやるつもりだった。
果たして結果は予想以上のものだった。
制御が追いつかず、取引場所のホテルが半壊してしまったほどだ。
以来、一流の私を超一流にしてくれた愛刀として大切に使っている。
私の理解の内ではセカンドワールドオンライン中、最強の武器だ。
しかし、唯一の弱点が強度がまるでない点だ。
ヨウメイ程度の攻撃力でも楽々と破壊できる。
必然、普通の剣士のように刀で相手の攻撃を止めるという防御法は取れない。
ハイランカーに【次元斬り使い】がほとんどいない理由がそれだ。
よって、私は防御を捨て回避だけを磨いてきた。
元々、剣士として技量はずば抜けてる。防御と回避であれば、ほとんど回避を選択していた。
避けきれない範囲攻撃や飽和攻撃は【次元斬り】で止めればいい。
相手の防御を無効化してダメージを入れる【次元斬り】は【消滅】と並び最強だ。
その信念はたとえ超高速演算型NPCが相手であっても揺るがない。
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