第614話 トラップ使いVS次元斬り剣士⑥
目的のポイントにまで誘導を完了した。
ここでトラップを発動させれば、確実に勝てる。
だが、問題なのはこのトラップは未完であること。
現時点で作動させれば、私も巻き込まれて死ぬということだ。
敵を単独でこの地点にまで誘導し、私が遠距離で起爆。トラップが発動し、敵は圧壊する。
それが想定していたプランだ。
極大の殺傷能力を持ったギミック自体は完成している。
未完なのはどうやって単独でこの場に誘い込むかという点だった。
対策として登山道に障害物を作り、通行不能にさせる。
そうして看板などで誘導し強制的に迂回させ、この場所に誘い込む。
あるいは冒険者組合などで精鋭を雇い、この場に誘導する。
その後、指定のポイントまで来たら雇われ冒険者ごと殺すなど色々、考えていたが結局、決定打を思いつくことなく今日まで来てしまった。
こんなことなら完成させておくんだった。
まさか、自分が生き餌役をやるはめになるとは…
そもそも達人者級剣士とタイマンをはるなんて想定もしていなかった。
因果応報という奴か。
しかし、この欠陥トラップを使うぐらいしか三栗原を倒す方法は思いつかない。
やはり、なんとか三栗原の脚にダメージを与えこの場に釘付けにし、遠距離から起爆するしかないか。
左腕を破壊できたのだ。脚の一本ぐらいなんとかなるだろう。
長考したせいで、既に【次元斬り】の間合いだ。
止まっているのは危険だ。斬られるのを覚悟で突っ込むしかない。
狙うべきは足。
既に【青気】も尽きかけている。長時間戦闘になれば、私の負けだ。
その時は、この未完のトラップを発動させ、地獄まで道連れにするしかない。
いや、もはや私の負けはなくなった。最悪でも相打ちに持ち込める。
大丈夫。私は負けてない。
めげそうになる心を無理やりな理論で納得させる。
【気】は精神エネルギーと深く関係している。
敗色濃厚を認めれば、形勢は一気に傾く。
心が折れれば、【青気】の展開は不可能。
私の不敗の精神が【青気】の出力を維持しているのだ。
直線的な移動を止め、緩急と意味のない動きを混ぜてみる。
達人者級の剣士に対してなんとも頼りないフェイクだが、私の場合、【次元斬り】を一度でも喰らえば死だ。
保険はどれだけかけてもかけ過ぎることはない。
現に、三栗原は攻撃を仕掛けてこない。
カウンター狙いか?
だとしたら、さらに厄介な…
達人者級剣士が神経を研ぎ澄まして構えている場所に突撃しろというのだから。
虎の尾を踏んでこいと言われた方がまだ、気が楽だ。
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