第612話 トラップ使いVS次元斬り剣士④
これで『保蔵の竹筒』に込められた【黄金烈眞槍】は後1本のみ。
残り2本しかなかったから、必殺必中のタイミングで使いたかったのに。
死ぬよりましだが、使わざるをえない状況にまで陥った自分に腹が立つ。
照準がまるで絞れてなかったせいで、直撃とまではいかなかった。
それでも達人者級剣士の腕を一本落とせたのは大きい。
だが、三栗原に動揺の様子が見られない。
普通なら痛みで悶絶するところだが。
【痛覚麻痺】でも持っているのか。
「今のは春日井の【黄金気】か…えげつない道具を持っている。【気】を保存する技術があるなんて、何でもありだな第三系統外というのは…」
三栗浜がボソボソと感想のようなものを述べている。
今までよりも若干、声量が大きい。
自分に一撃を入れれる相手と分かり、ようやく私のことを認めたか。
「うかつに近づかないことね。私は『保蔵の竹筒』を後、37本は持っているわ。次はその首を吹っ飛ばすわよ」
ハッタリで牽制を入れる。
本当は残り1本。しかも、サンプルとして採取に協力してもらったわけで本来は実戦使用を想定していない。
ただでさえ、真澄様の【黄金烈眞槍】は出力値が高い。
本当に作動するかどうかも実は怪しいのだ。
しかし、口撃も立派な攻撃だ。今はなりふりかまっていられない。
「ふふっ…本当は残り1本なんでしょう」
三栗原が子供のイタズラを見つけたような表情で指摘してくる。
バレてる~
さっきから使ってる【鑑定】のスキルのせいか!?
所有アイテムまでバレるなんて、プライバシーの侵害だ。
「けど、これでハッキリしたわね。やはり、スペックに的にはそこいらの雑魚と同じ。ステータス表示に映らない【青気】とその小賢しく回る頭脳が最大の武器というわけね」
なんだか、また、盛大な勘違いがされている気がするが…
戦闘中に頭をフル回転させるなんて、どんな人間でも同じだと思うが。
しかし、いい感じに時間稼ぎに成功した。
あの三栗浜と会話が成立するぐらい濃密な時を過ごしたのだ。
これだけの時間があれば、【黄金気】を持つ真澄様なら山を下っているころだろう。
山を下れば王国の領土だ。多分、今頃は応援の軍と合流しているころだろう。
というか、お頭、そのぐらいの手配はやっているだろうな。
三栗浜以外にも追っ手がいる可能性はあるのだ。
こんなところまで、来れる達人者級は限られているだろうが、そのぐらいの機転は効かせてほしい。
総大将の命を危険にさらしたのだ。アフターケアはしっかりやってほしいものだ。
心の中でお頭にクレームを入れると若干、気持ちに余裕ができた。
そろそろ、自分が生き残る戦術を組み立てるか。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『過去1年の中でも最大級にまずい1日だった。やはり、こういう時に備えてストックを作っておかないと簡単に詰む。それを思い知らされた1日だった』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。