第607話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの方のことは真澄様と呼べ⑫
まだ、対軍用外トラップは完成していない。しかし、近場で戦端が開かれたのなら放っておくわけにもいかない。
コ・エンブに最終調整を頼み、四人衆を連れて慎重に山を降りる。
ほとんど、徹夜続きで作業をしていたのが悔やまれる。
しかし、身体は問題なく動く。生と死の境界線を漂っているから疲れを感じてないのかもしれない。
正直、あまりいい状態とは言えない。
感覚が普段より鋭敏すぎるのだ。
慎重に、周囲を窺いながら山を降りていく。そのせいで進軍速度はひどく遅い。
炎はもう止んでいる。一体、誰が戦っているのか。
その時だった、高速で山を登ってくる存在を感じた。
私はさっと身を隠すが、サ・ソウトウは逆に目立つ場所に位置取った。
「あれは、お頭だ」
満面の笑みでサ・ソウトウが報告してくる。
私としてはこれも【トラップ】の可能性があるのでもっと慎重に対応したかったのだが…
【他人に擬態するスキル】や【他人を操作するスキル】が存在するとも聞く。戦争中なのだ。用心に越したことはない。
しかし、どうやら本物のようだ。
お頭も私達の姿を確認すると破顔する。
身体はボロボロで、【白気】の量もおそろしく少ない。
既にかなりの敵とやりあった後なのだろう。
サ・ソウトウの【白気】を使い回復させる。同時に互いの情報交換を開始する。
お頭はココにいるのが私達だけだと分かるとあからさまに落胆した。
なんと、帝国に先制攻撃を加えたのは真澄様だという。
お頭はその護衛だが、途中で続けて強敵に遭遇し、追い返えされたという。
真澄様は何をやってるんだ。
何で大将が1人で先陣を切っているんだ。
しかも、【聖竜皇召喚】なんて切り札を持っていたとは。
秘匿したい気持ちは分かるが作戦が一か八かすぎる。
私に教えてくれたらもっと効率的で安全な策を献策したのに。
お頭もお頭だ。
強敵と連戦し消耗したからといって、護衛対象を放置する理由にはならないだろう。
自分の命を使ってでも真澄様を最初に逃がせよ。
首を絞め殺してやりたい気分だったが、今は真澄様の救出が先だ。
しかも、相手は次元斬りを使う達人者級の敵。
何だってそんなのに真澄様は恨みを買ってるんだ。
攻撃を受ければ即死の敵。
お頭が私達を見て落胆した意味がようやく分かる。
以前、私と戦った戦闘狂のクーリッジでもいれば喜ぶだろうが、全員の表情は暗い。
私達では屍の山を築くだけだからだ。
命を使って5枚分の盾となる。
5枚では山にすらならないかもしれない。
やはり、ここはお頭の回復を優先して、お頭に戦ってもらうか。
それが最も勝率が高い。
しかし、回復の速度が遅い。このまま完全回復を待っていたら真澄様が死んでしまうかもしれない。
その前になんとか時間を稼がないと。
そこで、脳裏に稲妻が走る。
そうか。戦闘の勝利を目的にするのではなく、真澄様の逃走時間の確保を目的にすればいいのか。その上で、私達全員が生き残る。
第一目標が真澄様の逃走。第二目標が真澄様の逃走時間の確保。第三目標が私達全員の生存。
この条件で戦えばいいのだ。
そのためにはまず、遠距離攻撃トラップ。
できれば、ダメージを与えるのではなく、時間稼ぎを主目的にしたトラップが望ましい。
ここにある材料と人員で、作れる最速最適のトラップは。
眠っていた私の頭脳がようやく活動を開始する。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
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あけましておめでとうございます。今年、初投稿です。
せっかく新しい年が始まったのだから新しいことをしたい。
毎年、そう思い記録にも残して上達を観察しているのだが中々、成功しない。
時間が足りないのだ。
いや、時間とは作るものだ。
自分の怠惰な時間を削り、効率的に使えばもっとうまくいくはずだ。
今年こそ、今年こそ成功させるぞ。
とりあえず、睡眠時間を削るところから始めるか。
もう少し正しいリズムでの生活を成功させるべきなのだ。
と所信表明したところで明日の投稿も頑張ります。
皆様、今年もよろしくお願いします。