第605話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの方のことは真澄様と呼べ⑩
言いたいことを一息で言いきってしまった。
そこで、始めて自分が見慣れた団員の顔をまるで見ていなかったことに気付く。
怖くて目を合わすことができなかったのだ。
こんな野心、私の愚かな妄執なのではないだろうか。
不意に声がする。最前列にいたサ・ソウトウだ。
立ち上がり、私に賛成してくれた。
「俺はヨウメイを支持するぜ。【フォリー・フィリクション・フロック】の一員として、絶対に名をあげてやる。帝都じゃ、暴れ足りなかったんだ」
1人が賛同の声を上げると2人、3人と賛同の和が広がっていく。
「私も。遠くからちらっと見ただけだけど、信じるに値する人間だと思う。何と言ってもお頭を負かした人間よ」
「俺もだ。今度は留守番役じゃなくて、最前線で働くぜ」
「俺もだ。【フォリー・フィリクション・フロック】の一員であることに誇りは持っていたが、先細ることは分かっていたからな。ここらで職変するのも悪くない」
「私も。帝国を打倒し、英雄になる」
皆、賛成してくれるだけでなく、口々に自分の夢を語っている。
いつの間にか、全員が立ち上がり、熱い目で私を見ている。
団員全員が私の想いに賛成してくれたのだ。
ならば、私のすることは一つだ。
「なら、行こう! 大要塞マムルークへ。私達が春日井真澄を支援し、この戦争に勝つ!」
私がそう号令をかけると、皆、熱に浮かされたように持ち場に帰っていった。
私は【フォリー・フィリクション・フロック】の説得をやりきったのだ。
そう思った瞬間、足から力が抜けていった。
だらしなく、その場に座り込む。
一生分の【気】を消費した気分だ。
本来なら、こんな無様な格好を団員には見せられない。
私はいまや、【フォリー・フィリクション・フロック】の指導者的立場に立ってしまった。
トップがこれでは部下達が不安に思う。
そう思い、片膝をついた状態で誤魔化している。
真澄様であれば、同じ状態でも毅然として立っているだろう。
どれだけ心に疲弊を感じても、それを表に出すことを許さない人だ。
その姿を想うと再び力が湧いてきた。
まだ、座り込むわけにはいかない。
やるべきことが山程あるし、私にしかできないこともある。
早速、その場でコ・エンブを呼びつけると、大要塞マムルークに行くよう指示だす。
先触れとして受け入れの準備をしてもらうためだ。
あるだけの食糧は持参するつもりだがこれだけの人数が押しかけるのだ。心の準備が必要だろう。
本当なら言い出しっぺの私が行くべきだが、私には私にしかできない仕事が残っている。
この山を対帝国用の決戦要塞にする準備が。
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