第603話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの方のことは真澄様と呼べ⑧
戦士に、剣士、料理人に村人、多士済々と言えば聞こえはいいが実態はただの烏合の衆だ。
しかし、やたら指揮だけは高い。ただの村人ですら今にも竹槍をもって突っ込みそうな勢いだ。
こんな軍を作って一体どうするつもりなのだ、真澄様は?
【気】の探知でどこにいるかを探ってみれば、やたらでかい【気】ばかりが集中しているせいですぐに分かった。
城壁の上だ。
見れば直弟子会議の時に遠目から見たディズレーリや、お頭もいる。
メッテルニヒとじゃれついてるのはクーリッジだ。一人知らない奴がいるがアレがこの要塞の司令官、グラッドストンだろう。
作戦会議や陣形の確認でもしているのだろう。なにやら、紙を見ながらこちらを指差し話し合っている。
その顔には迷いや悲壮感といったものがまるでない。
この戦力で勝つつもりだ。
その表情を見て一つだけ分かったことがある。
私が【フォリー・フィリクション・フロック】を動かさなければ真澄様は敗北するということだ。
◇◆◇
大要塞マムルークの関所を抜けた私は足早に私達のアジトを目指す。
私の一挙手一投足でこの戦争の趨勢が決まる。
何が何でも【フォリー・フィリクション・フロック】を動かさねばならない。
私にそんなことができるだろうか?
いや、迷っている場合ではない。やらなければ、真澄様が死ぬ。それだけだ。
なんとなく、私達が協力しなくても真澄様なら勝つという漠然としたイメージを抱いていた。
理性では敗北を予感し、感情では真澄様の勝利を予感していた。
それならそれでいいと思っていた。
真澄様がウルトラCを使い、この戦争に勝利する。【フォリー・フィリクション・フロック】は無謀な戦争への参加は見送る。
お頭だって未だに私達への命令を送ってこない。完全に個人で戦争に参加するつもりだ。
お頭も真澄様に仕えることには喜びを感じているが、勝利への道筋は見えていない。
だから、【フォリー・フィリクション・フロック】に待機指示を送っている。
しかし、今、私は真澄様が完璧に敗北する姿を予感した。
理性と感情がピタリと一致し、完全な敗北を予想した。
あんな戦力で勝てるわけがない。
私がバックアップしてあげないと真澄様もお頭も死んでしまう。
そう思い、アジトに向かって走る。
もはや、【フォリー・フィリクション・フロック】を巻き込むことに罪悪感はなかった。
これまでは巻き込んでいいのか?
巻き込んで勝てるのか?
理性ばかりが先行して、自分の想いは封印してきた。
しかし、今は巻き込んで勝つしかない。
私の選択はついに一つに絞られた。
やるべきことがハッキリ見えたのだ。
私の大好きな2人を救うために、最愛の組織を利用する。
それが私が獲得した結論だ。
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