第594話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの人のことは、まあ、フルネームでいいだろう⑱
本気を出しても殺せなかった相手。そんな存在は私をひどく焦らせた。
どうすれば抹殺できるのか。
本当に抹殺できるのか。
そんなことばかり考えていた。
だからひっぱりだしてきた。行き詰った研究テーマを。
殺せない相手への傾向と対策を考えるとどうしても最後に私の地力が足りない計算に陥ったのだ。
チャンスがそう多く与えられているわけではない。
失敗すれば、それが私の人生の終焉となるかもしれない。
そんな相手と遭遇した場合どう対処すべきか?
その恐怖が眠っていた研究への再試行に繋がった。
帝都への移動の間、何度も何度も試作品を作った。
嫌いな春日井真澄にも協力を仰ぎ、あらゆるパターンを試した。
もっと強くなる必要があった。
誰にも負けない真の強さが必要だった。
結果が出たのは春日井真澄と別れた後だった。
皮肉にも、殺そうとした相手が私の元からいなくなって、研究が一歩前進した。
ここでこの研究をまた投げ出すわけにはいかない。
この戦闘スタイルを確立し、いつか春日井真澄を殺す。
その目的を成就させるために、手頃なモンスターを使って実戦経験値を稼ごうとしていた矢先だった。
まさか初めての実験相手が達人者級だったというのは大きな想定の範囲外だった。
しかし、効いている。
なにせ春日井真澄の必殺技の一つだ。
英雄級の一撃だ。
真っ直ぐ、正面にしか飛ばないという特性が大きなハンデだった。
私が使っても躱される確率が高かった。
弾数も少ない。
確実に当てるための方策を練っていたのだ。
それ故のゼロ距離。
非力な私の力ではダメージなど与えられないと侮ったのがお前の敗因だ。
あれだけの強さだ、死んではいないだろう。
今の内にコ・エンブの回復と撤退をするか。
しかし、眩い【白気】による回復の光が私達を襲う。
まさか!? 今ので落ちてすらいなかったのか。
驚く間もなく脱出ルートをクーリッジによって防がれる。
「面白いね~君。本当に面白い。こんなに強い雑魚と戦うのは生まれて始めてだ。これが真澄さんに追いていった結果か。本当に真澄さんの言った通りだ。まだ、一週間も経ってないのに有意義な戦闘をもう5回は経験できたよ。前は1年に1度だってこんな面白い戦闘はできなかった。もっと君の実力を見せてよ」
喜々とした表情でクーリッジは叫んでくる。
仕方がない。『爆縮型』を使うか。
まだ実験中で最も危険なやつだ。
ダメージ総量の計算が未だ上手く行かず、下手をすればこのホテルが吹っ飛んでしまうがやむを得ないだろう。
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