第593話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの人のことは、まあ、フルネームでいいだろう⑰
『気の保存』の概念。
元々、【気使い】としては三流の私が一流の【気使い】と戦うために以前から研究していたテーマだ。
一流の【気使い】と三流の【気使い】、実力の差はどこにあるか?
私は【気】を扱う技術と【気】の総量だと結論付けた。
技術に関しては得意分野だ。ひたすらトライ・アンド・エラーを繰り返せば、いずれなんとかなる予感はある。
問題は【気】の総量だ。
こればかりは先天的なものがあるのか、どれだけ訓練しても総量が大きく増えることはなかった。
そこで考えたのが『気の保存』の概念だ。保存していた【気】をいつでも、どこでも手軽に使うことができさえすれば、私だって立派な【気使い】だ。
さらに、爆薬の保存、毒の保存、エネルギーの保存、など【保存】の概念は【トラップ】の【スキル】とひどく相性がいい。
これを修得できれば、今よりもっと強くなれる。お頭をも確実に殺れる。
そう思って始めてた研究だったが、他人の【気】を保存しておくことはひどく難しかった。
自分の【気】の保存ならある程度、可能なのだが、他人にサンプルを提供してもらい保存するとすぐに霧散した。
【気】はただそこにあるという状態をひどく嫌がるようだ。逆に指向性を持たせると持続時間は長くなる傾向があった。
また、個人差も大きくお頭の【気】は強力だがすぐに霧散し、春日井真澄のものは放置しててもすぐに消えることはなかった。
ある者は威力は弱いが持続時間が長く、またある者は威力は強いが持続時間が短い。
千差万別だった。
面白いのは持続時間を自分でコントロールできない点だ。
同じ人間でも長時間持続するものや、一瞬で霧散するもの、様々なパターンがあった。
正しく本人のメンタル状態が関係しているのかもしれない。
それらの仮説と考察をお頭に話をしてみたらとても喜んでくれた。
この現象に気付いたのは世界でお前だけだ。しかるべき場所に提出すれば、世紀の大発見になるとオーバーな喜び具合だった。
引き続き研究を続行しろと指示をもらい、貴重な資料を手渡してくれた。
どれも、研究内容に合致した資料で私が欲しかった資料だった。
お頭も嘗て、この概念を研究したことがあるのかもしれない。
しかし、研究は行き詰まりを見せた。
というより、地味な研究で応用性も低い。
『気の保存』を使おうという人間がそもそも少ない。
一流の【気使い】をメインのターゲットに据えるなら、【気】の量を増やすためのトレーニングをした方がいい。
私のような三流の【気使い】なら、すっぱり諦めて金儲けにでも専念し、その金で一流の【気使い】を雇った方が効率がいいのだ。
非戦闘型が無理をして【気】の量を増やし、戦闘に備えるという発想自体が間違っているのかもしれない。
そんな風に考え、上手くいかない研究への言い訳にしていた。
転機はもちろん、春日井真澄だった。
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